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ピコロコの長~いオチンチン
 └─葛西  2010/07/30

 みなさんは、体の大きさに対してオスの生殖器(オチンチン)がもっとも長い生き物を知っていますか?

 いきなりびっくりするような質問でごめんなさい。でも、これはまじめな生き物のお話です。「もっとも長い」だけならば、シロナガスクジラの 2.4メートルが最長だそうです。でも、体長との割合で考えると、じつはフジツボのなかまの方が長いのです。

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアでは、チリ生まれの世界一大きいフジツボのなかま、ピコロコが展示されています(ピコロコの詳しい紹介はこちら)。

 先日、このピコロコがニョロニョロと細長い管を伸ばしていました。それが、ピコロコのオチンチンです。ピコロコは、以前このコーナーでも紹介したように、甲殻類、つまりエビやカニのなかまですが、おとなになると岩に張り付いてくらすため、自由に動き回ることができません。動き回れない環境の中で、他のなかまと交尾するために役立つのがこの長い生殖器です。

 フジツボのなかまは、生殖器を自分の体長の8倍近く伸ばせるといわれています。もっとも、ピコロコは雌雄同体、つまり同じ個体がオスでありメスでもある(卵を作る卵巣と、精子を作る精巣の両方をもっている)生き物で、交尾が必要ないようにも思えますが、他のなかまの遺伝情報を取り入れるために、交尾をおこないます。

 ニョロニョロを確認してから1か月後、ピコロコが煙のようなものを吐き出しているのが見られました。もやもやした塊がビュッと噴出し、塊のまま、水面の方へ浮かんできます。まるで噴火を思わせるような光景です。水槽の水を汲んで顕微鏡で見てみると、ピコロコの赤ちゃん(ノープリウス幼生)がたくさんいるではありませんか。フジツボのなかまは、卵をすぐには体の外に出さず、殻の中で孵化させ、幼生を吐き出すのです。

 さて、大きなフジツボの小さい赤ちゃんのようすは、次回紹介させていただきますので、どうぞお楽しみに。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 堀田桃子〕

(2010年07月30日)



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