上野動物園の小獣館1階にはマヌルネコがいます。マヌルネコは、モンゴルから中東あたりに生息しているヤマネコで、春から初夏にかけて、岩穴、あるいはモンゴルマーモットなどの動物が作った穴の中で出産し、育児をします。
小獣館の展示室内には、60×50×高さ45センチの木製の巣箱があります。巣箱の中には仕切り板を設けてあります。これは、入口から中がすぐには見えないようにするための構造です。また、マヌルネコが落ち着くよう、巣箱の入口は奥の壁に向けました。
しかし、巣をのぞくことができないということは、中のようすがわからないということでもあります。それに、マヌルネコの赤ちゃんは生後1か月くらいしないと巣穴から出てきません。2008年に生まれた「タビー」は、生後すぐに母親にくわえられて出てきたので誕生日がわかりましたが、2007年に生まれた「ペッキー」は、自力で巣箱から出て来たときにはすでに成長が進んでいたため、誕生日がわかりませんでした。
飼育係としては、誕生日や誕生数、育児放棄の有無など、知りたいことは山ほどあります。そこで巣箱を新築した際、小型カメラを設置できるよう改良しました。これで、マヌルネコにストレスをあたえずに、中のようすを観察できるようになりました。観覧通路からも観察できるよう、モニター画面も設置しましたので、じっくりと巣の中をごらんください。もしかしたら、出産の瞬間に立ち会えるかもしれません!
写真上:巣箱
写真中:巣箱平面図
写真下:巣箱内部を移したモニター画面
〔上野動物園西園飼育展示係 藤岡絋〕
(2010年04月30日)
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