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ニシツノメドリのひなが群れ入り
 └─上野  2009/12/17

 上野動物園西園のニシツノメドリ展示場では、2009年7月11日と20日に1羽ずつひながかえり、12月7日に群れ入りしました。

 ところで、ニシツノメドリってどんな鳥か、ごぞんじですか?

 ニシツノメドリは北大西洋に生息する小型の海鳥で、全長約20センチ。繁殖期になると目の上に角(ツノ)状の角質があらわれるので、「角目鳥」=「ツノメドリ」というわけです。お客さんからペンギンと間違えられることもありますが、ペンギンとはまったく違う鳥で、よく見ると、くちばしの色や翼の形が異なります。

 では、孵化から群れ入りまでの経過をご説明しましょう。

 孵化したばかりのひなは、人の手のひらに乗るほどの大きさで、灰色の綿毛に包まれています。親による子育ては展示場の巣箱の中でおこなれるので、親鳥を驚かさないようにしながら、ときどき巣箱をのぞいて観察しました。

 孵化後1か月あまりで羽根も生えそろい、親鳥と同じくらいの大きさに成長したころ、ひなを巣から取り出し、別の部屋に移しました。どうして親鳥から離すの?と思われるかもしれませんが、ニシツノメドリは巣立ちと同時に親子のきずなが切れ、ひなは自分で生きていかなければなりません。巣立ち後、野生では広い海へ旅立つことになりますが、飼育下ではスペースに限りがあり、巣立ったとしても親に追い出されることがあるので、いきなり群れに入れるのは危険です。また、野生とは異なり、飼育下での餌場は水中ではなく陸上です。つまり、野生本来の環境とは違う飼育下の環境に慣れるための「訓練」が必要なのです。

 いきなり別の場所に移されたひなは、初めは警戒して餌を食べませんでした。そこで、ダンボール箱を使って隠れ場所をつくり、2羽をいっしょにしてやると、落ち着きを取り戻しました。

 最初は餌をひなの近くに置き、徐々に離して、陸上で餌を食べることを覚えさせました。その後、展示場の一部を囲ってプールをつくり、終日そこで餌を食べたり泳いだりできるように慣らしていきました。

 さあ、いよいよ群れ入れです! 囲いをはずして展示場に出すと、ひなたちはさっそく泳ぎ始めました。まだ環境に慣れないせいか、展示場の隅にいることが多いのですが、他の個体とのトラブルもなく、餌を食べているところも確認できました。

 なお、ひなにはまだ「角目」はなく、くちばしの厚みも親鳥と違います。このくちばしがいつ親鳥のようになり、いつ「角目鳥」になるのか、楽しみにしながら観察しています。

写真上から:
 孵化後27日目のひなと親鳥(2009年08月07日)
 餌を運ぶ親鳥(2009年08月13日)
 展示場の一部に作ったプール(2009年11月13日)
 群れ入り後のひな(2009年12月17日)

◎東京ズーネットBBの動画
 プールに入ったニシツノメドリのひな(2009年10月28日撮影)

〔上野動物園西園飼育展示係 坂下涼子〕



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