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ウォークインバードケージ、そこは……その3
 └─多摩  2009/10/09

 昨年(2008年)5月1日にオープンした多摩動物公園の「ウォークインバードケージ」は、大きな2つのドーム型のケージから成り立っており、おもにアジアの水辺にすむ鳥を飼育展示しています。このケージの特徴は、来園者が中に入って歩くことができること。つまり「大きな鳥かごの中を歩く」イメージです。ただし、鳥がいるそばを歩くことになるので、来園者の方々には、「ケージ内は走らないでください」「鳥に餌をやらないでください」「鳥を追いかけないでください」「柵内に入らないでください」など、さまざまなお願いをしています。また、ケージは通り抜け式ですが、カワウソ舎側からの一方通行をお願いしています。

 ある日のこと、バードケージを閉める午後4時半(※)直前に入った親子連れのお客さんが、途中まで行って戻って来ました。お母さんが「大きい鳥が逃げていたので……」とおっしゃるので、入口から出ていただきましたが、「大きい鳥が逃げている」? 半信半疑で確かめに行くと、西ケージに入る扉の前まで来て、そのお母さんの言葉の意味がわかりました。コウノトリとナベコウ、そしてソデグロヅル、大きい鳥たちが西ケージ内の通路に出ていたのです。

 西ケージ内は、低い杭とロープを境にして、「鳥たちがふだんいる場所」と「来園者用通路」に分かれています。人が通路から柵の向こう側には入って行かないように、鳥たちも通路側には出て来ない──多くの方はそう思っているようです。

 ケージ内の通路に鳥が出ていると、そのまま進んでいいのか悩んでいる方もいらっしゃいます。また、通路に出て来た鳥を来園者が囲んでしまうこともあります。そうなると鳥はそこから逃げられなくなってしまいます。鳥が攻撃してくることはほとんどありませんが、通路に鳥が出ているときは、そっとそのままそばを通りすぎ、鳥から逃げられるように進んでください。

 鳥たちは人に馴らしているわけではありません。人に馴らしてしまうと、逆に人とのトラブルが生じることも考えられます。むしろ、ケージ内の通路を利用するしかない人間の側が、鳥とのつきあい方を学べる場所になってほしいと考えています。

 なお、バードケージに新しいなかまが増えました。6月に井の頭自然文化園で孵化したカイツブリです。オスとメス、計2羽がやってきました。東ケージに入って右側のケージにいます。まだまだ、幼い表情のカイツブリたちが水に潜るようすを、ガラス窓ごしに見ることができます。

 鳥が放されたケージを通り抜けながら、鳥を間近に見ることができるウォークインバードケージ。そこは、「自由気ままな」鳥たちの楽園です。そんなかれらと共存できる場所がバードケージの魅力なのです。

 ※11月中旬から2月、ウォークインバードケージは午後4時で閉まります。

写真上:ケージ内の通路に出てきたアネハヅルとオシドリ
写真下:まだ幼い表情のカイツブリ2羽

ウォークインバードケージ、そこは……その1
ウォークインバードケージ、そこは……その2

◎「カイツブリのひなが親鳥の背中から顔を出しました
 (井の頭自然文化園)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 土屋泉〕

(2009年10月09日)



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