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「夜光性」昆虫を「夜行性」昆虫に展示替え
 └─多摩  2009/01/16

 多摩動物公園昆虫生態園の大温室を抜け、出口に近いところに「夜光性昆虫」の展示コーナーがあります。開園当初、ここではオーストラリアやニュージーランドに生息するグローワームを展示し、暗闇で光る特徴的な生態をお見せしていました。

 しかし、約7年前の2002年に昆虫園本館が作り直された際、グローワームはその本館1階に移し、昆虫生態園の空いた場所にはホタル類や、南米などに生息するヒカリコメツキなどを展示しました。ただし、ヒカリコメツキは累代飼育することがむずかしく、一年中展示することは困難でした。

 そして、最近痛感するのが、夜光性昆虫の暗闇が嫌われることです。ここでの照明は、足もとにある2か所のほのかな明かりだけです。外光も入りません。たとえば、悲鳴とともに走り去る子どもたちだけのグループ。展示は見ようともせず、走り去る音だけがむなしく響きます。先生に引率された小学生の場合も同様です……。「お化け屋敷」と呼ばれるのを聞いたことさえあります。

 そこで、年内最終開園日の翌日である2008年12月29日から展示替えをすることにしました。正月は2日から開園です。わずかな期間なので、構造を大きく変えることはできません。そこで、「夜光性昆虫」をやめて「夜行性昆虫」を展示することにしたのです。とくに、最大の難点だった暗闇をやめ、赤色照明を使って、夜行動する昆虫を展示しました。

 まず、コーナーの最初にオーストラリア産のヨロイモグラゴキブリ3頭とヒカリコメツキを展示しました。ただし、残念ながらヒカリコメツキは赤色照明では発光しません。つづいて、多数のマダラカマドウマとオキナワナナフシ。さらにクツワムシ10頭。クツワムシの声は小さいながらもガラスの向こうから聞こえてきます。出口近くの外光が入ってくる場所では、ヤマクダマキモドキと沖縄産のヒラタツユムシ各1頭を展示しました。

 これでかなり改善されたのではないかと簡単に考えていたのですが、入園者の反応を見て初めてわかったことがありました。赤色照明では解説パネルの文字が小さくて読めず、写真も見えないのです! すぐさま大きな文字に作りかえ、解説パネルをみやすい位置に移動したところ、その前で立ち止まっていただけるようになっただけでなく、子どもに種名を読んで聞かせる保護者の方も見られるようになりました。

 とはいえ、暗い通路を怖がるお子さんや大人の方がゼロになったわけではありません。歩きやすい通路という問題も含め、まだまだ難問が残っています。

写真上:ヨロイモグラゴキブリ
写真下:クツワムシ

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 三枝博幸〕

(2009年01月16日)



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