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アジアゾウ3頭の放飼場での同居について
 └─ 2023/09/02
 上野動物園では、「スーリヤ」(メス、1994年生まれ)、「ウタイ」(メス、1998年生まれ)、「アルン」(オス、2020年生まれ。ウタイの子)の3頭のアジアゾウを飼育しています。

 アルンが生まれる前は、スーリヤとウタイは同居していました。しかし、2020年に「アティ」(オス)が死亡し、その後にアルンが誕生、さらに年長の「ダヤー」(メス)が死亡するなど、ここ数年はめまぐるしく状況が変化してきました。その結果として現在は、スーリヤが単独ですごし、ウタイ・アルン母子が2頭でいっしょにすごしています。

 しかし本来ゾウは、メスと子どもは群れをつくって生活する動物です。そのため現在は、3頭のゾウたちが放飼場でいっしょにすごせるよう、同居に向けての取組みを進めていますので、その状況をお伝えします。


3月の同居のようす
(左からアルン、スーリヤ、ウタイ)

 3頭の同居は、現在までに四度、方法を随時変更しながらおこなっています。

 一度目は2021年3月に、2週間ほど実施しました。この時は、まだ幼く落ち着きのないアルンのことをスーリヤが怖がるようすが見られ、回数を重ねてもその状況は改善しませんでした。そのため、スーリヤの精神的負担やアルンの安全面などを考慮し、中止の判断をしました。海外のゾウ飼育の専門家からのアドバイスもあおぎながら、次回の同居は「アルンが万が一、スーリヤからの攻撃を受けても大けがをする可能性が低くなる体格(目安として体重1,000kg)まで成長してから」おこなうこととしました。

 そして、アルンの体重が1,000kgを超え、放飼場の砂交換工事も終えた2023年3月、二度目の同居を実施しました。誕生から2年以上経過したアルンは、日ごろから柵越しにはスーリヤとの接触を重ねていたこともあってか、一度目の同居に比べて落ち着いたようすでした。アルンに対するスーリヤの反応も改善していて、同居して20分間ほどは緊張感がありながらも3頭で穏やかにすごしているように見えましたが、やがてスーリヤがウタイを執拗に追い回す、鼻で押すなど、ウタイへ執着するようすが見られるようになりました。そのため2頭の関係性を悪化させることがないよう、同居中止の判断をしました。

 その後三度目の同居を6月に、四度目の同居を7月に実施しましたが、スーリヤがウタイに対して執着する行動は減少しなかったことから、同居を継続するまでには至っていません。スーリヤの執着行動は、ダヤーの死亡やアルンが新しく加わったことなどにより、個体の関係性が変化したことが原因と考えられます。

 もともとゾウは、闘争などにより大きな関係悪化が見られると、関係を改善することが難しくなる場合があります。そのようなリスクを念頭に置くとともに、アルンの成長にともなう変化、スーリヤ・ウタイの関係性なども汲み取りながら、最善の飼育展示方法を模索していく必要があります。3頭の穏やかな生活を第一に考え、飼育係一同、これからも注意深く観察を続けていきます。

〔上野動物園東園飼育展示係〕

(2023年09月02日)



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