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【近況更新】子ども動物園すてっぷ──ふたば牧場のお年寄りたち
 └─ 2023/05/01(2024/01/10更新)
2024年1月10日追記:
 「えりか」の近況を追記しました。くわしくはこちらをご覧ください。



 2017年にリニューアルオープンした「子ども動物園すてっぷ」の「ふたば牧場」には、旧子ども動物園時代から飼育を続けているお年寄りの動物たちがいます。長期間にわたって子どもたちに家畜のすばらしさを教えてくれている、立派な先生たちです。ここでは、そのなかでも特に高齢な2頭についてご紹介します。

野間馬の「えりか号」

 ふたば牧場で飼育している野間馬の「えりか号」(メス、以下えりか)は2023年5月10日に29歳の誕生日を迎えます。野間馬の寿命は平均20年前後といわれていますので、かなりのおばあちゃんです。

 えりかは、年とともにだんだん白くなる「葦毛あしげ」という毛色です。2008年に愛媛県の野間馬ハイランドから来園したときは、まだ四肢の先やたてがみが黒っぽい色をしていましたが、年を重ねるにつれて全身真っ白になりました。いっしょにくらしているトカラ馬の「琥太郎こたろう」(オス)や与那国馬の「シン」(オス)が運動場で走り回ってはしゃいでも、お気に入りの場所でじっとたたずむえりかの姿は神々しく、まるで仙人のようです。

 2017年から少しずつ右眼が見えなくなり、点眼や投薬による処置をおこなってきましたが、最近では左眼もほとんど見えなくなりました。壁や柱、えさの位置などを一つ一つ鼻先でさわって確認しながら、ゆっくりと歩くようになっています。また、琥太郎やシンが近くにいても、いなないて探すそぶりをみせることもあります。

 琥太郎やシンもなんとなくえりかの状況は理解しているようですが、走り回ってぶつかりそうになることもあるので、状況に応じて群れからの隔離や室内飼育などをおこないながら、えりかが心穏やかにすごせるよう日常の管理に気を配っています。


お気に入りの場所でたたずむえりか
(撮影日:2023年4月25日)

2023年7月4日追記:えりかの近況について

 もこもこした冬毛から、すっきりした夏毛に生え変わりました。そのぶん、やせているのが目立つようになっています。

 高齢になるにつれて採食量が減ってきたため、胃腸などへの負担を考慮しつつ、えさの内容を変更しました。食べやすいように種類を変えたり、えさの場所を増やすなど与え方を調整したり、ほかのウマに邪魔されることなくゆっくり食べられるよう一時的な隔離をしたりといろいろ工夫していますが、それでもゆるやかな体重減少が続いています。最近は休息する時間も少しずつ増えて、寝転がって熟睡しているすがたがしばしば見られるようになってきました。

 また、以前より慢性的な蹄葉炎ていようえん(蹄の内部の病気)を患っており、蹄の状態に合わせて定期的に蹄を削って調整しています。重症化を予防するため、日常管理の中でも1日2回、蹄の消毒をおこなっているほか、蹄の質を改善するためのサプリメントを与えるなど栄養面も見直しています。


夏毛になったえりか
(撮影日:2023年6月19日)

2023年12月1日追記:季節外れのえりかの換毛について

 ウマにも換毛のサイクルがあります。しかし、高齢なえりかは昨年(2022年)から換毛がうまく進まないことがありました。今年はそれがより顕著になっています。

 夏のうちに冬毛が生え、10月にはもう、もこもこした冬毛になりました。


冬毛になったえりか
(撮影日:2023年10月2日)

 11月初旬からその冬毛が緩やかに抜け始めていきました。その状況が11月下旬に急激に進み、冬毛がどんどん抜け、夏毛に換わっています。地肌がみえている部分もありますが、短い夏毛が生えてきています。


換毛がすすんだえりか
(撮影日:2023年11月27日)

 詳しく検査したところ、抜け落ちる毛のほとんどが、毛の生え換わりのサイクルでいう「休止期」(抜け落ちるべき時期)のものでした。また、真菌や寄生虫による感染は疑われず、皮膚の炎症やかゆがるようすも見られないため、内分泌疾患などによる休止期脱毛および換毛異常と考えられます。原因を探るために、さらに詳細な検査を進めています。


抜け落ちたえりかの冬毛
(撮影日:2023年11月27日)

 1日2回の手入れのときも山のようにえりかの毛が抜け落ちますが、えりか自身は換毛を気にするようすはなく、食欲もあがってきています。

 これからやってくる本格的な冬に備え、短い夏毛になってしまったえりかのために寒さ対策を強化しました。暖房した部屋にいるときは姿が見づらいこともあるかもしれませんが、どうかご理解いただければ幸いです。

2024年1月10日追記:えりかの換毛異常についての検査結果

 まだらに抜け落ちていた冬毛はすっかり抜けきり、現在はきれいな夏毛になっています。

 内分泌疾患や、ビタミンやミネラルなどの栄養不良を疑い血液検査をおこないましたが、異常は見られませんでした。年齢や天候等による換毛周期の異常と思われます。


お昼寝中のえりか
(撮影日:2023年12月30日)


ラマの「ラーマ」

 ラマの平均寿命が約20年といわれるなかで、ふたば牧場の「ラーマ」(オス)は2023年1月24日に24歳になりました。

 今のところ大きな怪我や病気もなく、アルパカやヤギといっしょにのんびりすごしています。しかし、高齢のために脚はすでに変形し、歩き方もずいぶんゆっくりになりました。日中も座り込んで日光浴をすることが多くなっています。立ち上がるのにも時間がかかるので、座り込んでいるラーマを寝室に移動させるときは、できるだけラーマのペースにあわせ、ゆっくりとおこなうようにしています。


座り込んで日向ぼっこをするラーマ
(撮影日:2023年4月25日)

2023年7月4日追記:ラーマの近況について

 座っている時間がさらに長くなり、歩くときに足をかばうようすも目立つようになったことから、6月12日にレントゲン検査をおこないました。以前より加齢にともない関節の異常がみられていましたが、検査の結果、重度の変形性関節炎をおこしていることがわかりました。高齢なので、体への負担も考慮しながら痛みをやわらげる薬を与えています。

 ラーマもだんだん採食量が減ってきて、ゆるやかに体重が減少しています。5月10日に毛刈りをおこなったため、お尻まわりの筋肉がおちているのが目立つようになっていますが、座った状態でも食べられるようにえさを与えるなど、できる限りのケアをおこなっています。


毛刈り後のラーマ
(撮影日:2023年6月22日)

 現在、この2頭についてはそれぞれの生活の質(QOL)の維持を第一とした飼育をおこなっています。天候や2頭の体調により、室内との出入りを自由にしたり、展示を休止したりするので観覧できないときもあるかもしれません。お年寄りの動物たちのためということを、どうぞご理解ください。

〔上野動物園子供動物園係〕

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(2023年05月01日)
(2023年07月04日:「えりか」「ラーマ」の近況について更新)
(2023年12月01日:「えりか」の近況について更新)
(2024年01月10日:「えりか」の換毛異常についての結果を更新)



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