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140周年企画ズーネット連載「上野動物園 この10年──西園の動物の10年」西園飼育展示係
 └─ 2023/02/01
 西園は蓮が繁茂する不忍池北側に位置するエリアです。西園飼育展示係の担当は、西園エリアから子ども動物園と両生爬虫類館を除いた動物の飼育展示となります。不忍池に飛来する野鳥も展示の一部のように見えますが、こちらは動物園で飼育管理しているわけではありません。

 この10年を振り返ってみると、西園飼育展示係にもいろいろなことがありました。代表的なものをご紹介していきたいと思います。

 まずはアイアイから。2009年に新しい展示エリア「アイアイのすむ森」が完成して以来、2018年までほぼ毎年のように繁殖が見られました。残念ながらうまく生育しないこともありましたが、この10年のあいだにアメリカ、イギリス、台湾の動物園に送り出し、その際に先方の飼育関係者との交流から給餌内容の改良や飼育環境の改善が進みました。「アイアイのすむ森」では、2016年にクロキツネザルも新たに導入し、その後順調に繁殖しています。


イギリスに移動したアイアイ

オカピは、2018年に北米のホワイトオーク保全センターから「バカーリ」(オス)が来園しました。それまで上野にいた「カセンイ」(メス)との繁殖が期待されましたが、バカーリ来園後まもなくカセンイが死亡してしまいました。その後、2020年にバカーリはよこはま動物園ズーラシアに移動し、横浜市立金沢動物園から「トト」(オス)が来園しました。


横浜市立金沢動物園から来園した「トト」

 キリンは、2017年に盛岡市動物公園から「リンゴ」(メス)が来園しました。そして「ヒナタ」(オス)とのあいだに2020年2月、「ヒカリ」(メス)が誕生しました。上野動物園では37年ぶりのキリンの繁殖でした。リンゴにとっては初産で、子を受け入れられなかったため、ヒカリは人工哺育で育ちました。

 カバは、2015年に愛媛県立とべ動物園から「ユイ」(メス)が来園しました。上野にいる「ジロー」(オス)との繁殖をめざしましたが、ジローは2022年3月に死亡しました。

 小獣館では、2013年にハリモグラの展示を開始しました。ハリモグラは卵を産んで母乳で育てる原始的な哺乳類です。上野動物園では明治時代以来、105年ぶりの展示となりました。


ハリモグラ

 次にご紹介するのは、この10年で展示を終了した動物たちです。

 オオアリクイは、2012年に「フジオ」(オス)が来園し、それまでいた「ガンコ」(メス)との繁殖が期待されました。2013年に妊娠しましたが、異常分娩のため帝王切開で子が生まれました。残念ながらガンコは回復せず死亡してしまいました。生まれた子は人工哺育により無事育ち、展示場にもデビューしましたが、2015年に沖縄こどもの国へ移動しました。フジオも次の繁殖のため静岡市立日本平動物園に移動したため、展示が終了しました。

 ホフマンナマケモノは、2014年に最後の個体「コウ」(メス)が死亡して展示が終了しました。2005年から始めた動物舎と園路のイチョウの木をつなげて自由に行き来できる「ナマケの渡り」の展示では、多くの来園者を楽しませてくれました。


ナマケモノ

 ハートマンヤマシマウマもこの10年で展示を終了した動物のひとつです。2014年に「パンジー」(メス)が、2020年に「トール」(オス)が死亡し、上野動物園にシマウマがいなくなりました。


シマウマの「トール」

 また、バックヤードになりますが、2012年に希少種を中心とした鳥類の繁殖に取り組む基地となる「繁殖センター」という非公開の施設が設置されました。それまではニシツノメドリを展示するズーストック舎(現在は取壊し済み)でおこなっていた鳥類の人工孵化、育雛に加えて、小笠原諸島に生息するアカガシラカラスバトの繁殖・保全に向けた取組みをおこなっています。

 繁殖を進め個体数を増やすとともに、小笠原・父島からの傷病個体の受け入れや大学との飼料に関する共同研究の実施するほか、小笠原に出張し住民に対して飼育状況の報告などもおこなっています。


2012年に設置された「繁殖センター」

 最後に、記憶にも新しいこの10年最大のできごとは、2020年の「パンダのもり」のオープンで、ジャイアントパンダの「リーリー」(オス)と「シンシン」(メス)の2頭が東園から西園に移動したこと、さらには2021年の「シャオシャオ」と「レイレイ」の誕生ではないかと思います。これについては2022年のジャイアントパンダ来園50周年企画もありますので、そちらもご覧になっていただきたいと思います。


2021年に生まれたジャイアントパンダ「レイレイ(左)」と「シャオシャオ(右)」

 振り返ってみると、私たちはいつも必死に動物たちと向き合ってきました。次の10年も動物たちにとってよりよい飼育環境づくりと、魅力的な展示の開発に取り組んでまいります。

〔上野動物園西園飼育展示係 森久保秀〕

◎140周年企画ズーネット連載「上野動物園この10年」
日本産希少野生動物の保全について
新たな一歩をふみだす「子ども動物園すてっぷ」
教育普及事業の変遷
動物病院の建て替え
変貌を遂げる入場門
都立動物園マスタープランに基づいたさまざまな取組み
新型コロナウイルス感染症への対策
ギフトショップおよびフードショップでの環境配慮への取組み
東園の動物の10年
両生爬虫類館の特設展示
飼料室の移転
『さるやまキッチン』オープン

(2023年02月01日)



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