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高齢動物のよりよいくらしのために──グリーンイグアナの飼育の工夫
 └─ 2022/03/31
 両生爬虫類館では、開館当初からグリーンイグアナを展示しています。グリーンイグアナは最大2mにもなる大型のトカゲのなかまで、本館でも人気の1種です(飼育係はそう思っています)。

 近年はずっとオスとメスの2頭を展示していましたが、この冬、メスの動きが緩慢になったり採食量が減ったりと体調の波が大きくなってきました。このメスは保護により来園した個体なので年齢は不明ですが、ここでの飼育歴は15年になります。グリーンイグアナの平均寿命は10~15年と言われています。高齢になったこのメスが今後もよりよいくらしができるよう展示からは引退させて、さまざまなケアをおこなうことにしました。

 高齢動物をケアするにあたり、できるだけストレスを与えないようにすることが大切だと考えています。そこで新たに次の2つのことに取り組みました。

①温度管理の工夫
 展示場では床暖房の微妙な調整ができないため上からの加温がメインだったのですが、日々観察しているうち、室温を保つだけでなく、お腹をあたためるとよいのではないかと考えました。

 そこで、天井から吊るした加温機の下に手ごろな石を置いて石をあたためてみたところ、満足げな顔をしながら一日に何度もその石の上に乗るようになりました(写真1)。


写真1:あたためた石にのるグリーンイグアナのメス
(撮影日:2022年3月10日)

②健康管理のためのトレーニング
 健康管理のために、定期的な体重測定を始めました。しかし、測定を強制的におこなうと精神的にも肉体的にもストレスとなってしまうおそれがあります。そこで、まず飼育係に抱かれることに慣れるトレーニングをおこないました。抱っこでリラックスしてくれるようになったら(写真2)、飼育係ごと体重計に乗るようにしたところ(写真3)、今ではかなりスムーズに抱っこしての体重測定ができるようになりました。

 今後は、必要に応じて採血や注射といった検査や治療もできるようトレーニングを進めたいと計画しています。


写真2:抱っこでリラックス
(撮影日:2022年3月30日)


写真3:体重測定のようす
(撮影日 2022年3月30日)

 こうした日々の小さな工夫の積み重ねの成果か、バックヤードに移ってからメスの食欲が増し、よく動くようになってきました。これからも元気に長生きしてくれるよう努力を続けていきたいと思います。

 現在、動物福祉(アニマルウェルフェア)への注目が高まり、動物園でもさまざまな取組みをおこなっています。哺乳類や鳥類だけでなく両生爬虫類も、動物園でのよりよいくらしのためにさまざまな工夫を取り入れて、少しずつですが着実に前進していきたいと思います。

〔上野動物園 爬虫類館飼育展示係〕

(2022年03月31日)



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