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ツキノワグマの冬眠
 └─ 2021/12/11(12/13更新)
 上野動物園では、2006年の「クマたちの丘」オープン以来、動物本来の生態を伝えることを目的にニホンツキノワグマの冬眠展示をおこなっています。

 今冬は、12月10日から15歳のメス1頭が冬眠に入っています。
 昨年の冬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため休園したことから、2年ぶりの冬眠展示となります。

 冬眠展示を始めたころは、冬眠について解明されていないことも多く、毎年がチャレンジでした。しかし、飼育下での冬眠を成功させるために研究・準備・記録を続けた結果、現在では環境を整えれば安定して冬眠展示がおこなえるようになり、今年で15回目となります。

 冬眠させるには、入念な準備が必要です。冬眠中は絶食するので、それを乗り切るために9月から体に栄養を蓄えさせる体つくりを始めます。主にサツマイモやクルミをじゅうぶんに食べさせて、今回は82㎏だった体重を11月末までに104㎏まで増加させました。


冬眠準備により体重が増加したツキノワグマ(メス、15歳)
(撮影日:2021年12月6日)

 体重が増えたところで、放飼場に出すことをやめ、「冬眠施設」と呼んでいる「展示室」「冬山の部屋」「冬眠ブース」の3部屋がつながった場所で終日すごさせるようにします。
 このころになると、毛足の長い冬毛がしっかり密に生え、見た目がふっくらし、動きもゆっくりになります。好みのえさも残すようになると、体の準備ができたサインです。それから、10日間ほどかけて徐々に給餌量を減らしていきます。絶食に入ると「展示室」を閉めて2部屋にし、飼育係の介入もやめてモニターでの観察に切り替えます。あとはクマしだいで、すぐに冬眠ブース内で深く眠る場合もあれば、いつまでもウロウロしている場合もありますが、注意深く春になるまで見守ります。

 今回は11月30日から冬眠施設に入り、その後、何回かは冬眠ブースから大量のフンを展示室に運び出し、展示室に寝場所をつくっていました。しかし、12月5日には冬眠ブース内に入って落ち着き、そのまま12月10日に冬眠に入りました。


冬眠ブース内のようす
(撮影日:2021年12月6日)

 冬眠中は1日に20時間以上眠ってすごしますが、寝藁を整えたりあくびや伸びをしたりと意外に動きます。冬眠のようすは観覧通路に設置されたモニターのライブ映像で観察できますので、動物園にいらした際は、時間を変えて立ち寄ってみるとおもしろいですよ。

 当園のツキノワグマの冬眠が明ける時期は、3月初めから5月まで幅があります。
 今回、冬眠しているメスはしっかり眠るタイプなので、放飼場で観察できるようになるのはゴールデンウィークすぎになるかもしれません。

※現在、モニター不調のためライブ映像による展示をお休みしています。修理が終わりしだい、再開しますので、今しばらくお待ちください。
※12月14日(火)から仮設モニターによるライブ映像の展示を再開します。

〔上野動物園東園飼育展示係〕

(2021年12月11日)
(2021年12月13日:モニター展示の再開について追記)



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