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子ども動物園すてっぷのブタ(アグー)の安楽死について
 └─ 2021/09/06
 2021年8月4日のお知らせのとおり、「子ども動物園すてっぷ」で飼育していたブタ(アグー)の「チルー」(メス)は、全身にがんが広がっていました。これまで、治療および苦痛の低減をはかり、生活の質(QOL)を維持することに努めてきましたが、回復が見込めず、今後苦痛が増大していく状況と判断し、大変残念ではありますが、やむを得ず、安楽死処置をおこないましたので、報告します。

これまでの治療経過など

2019年1月
 子宮蓄膿症(子宮に膿が溜まる病気)の疑いで摘出手術を実施したところ、がんが発見されました。この時点で明らかな転移は確認されず、経過観察としました。

2021年2月
 白血球数の著しい増加がみられたため、園内の動物医療センターで、CT検査と細胞診をおこなったところ、肺や腎臓など複数の臓器にがんの転移とみられる病変が見つかりました。

 しかし、がんが全身に広がっていることから、外科的手法による治療は不可能でした。抗がん剤での治療も検討しましたが、行動を制限した状態で静脈から持続的に投与する必要があることや、想定される副作用(悪心、嘔吐、下痢、貧血、食欲不振など)の重さを考慮し、高齢のチルーにとって今後のQOLを逆に損なう結果になると考えました。そのため、鎮痛剤の投与によりがんの痛みを和らげ、休息の妨げにならないようになるべく静かな管理をおこなうように努めることで、チルーが今までどおりの生活を送れるようにしました。

2021年7月ごろ
 鎮痛剤の投与を続けてきましたが、徐々に呼吸の異常やふらつきが増え、活動量も減ってきていました。加えて、食欲の減退が進行し、一日のほとんどを寝て過ごすのみとなっていたことから、鎮痛剤の効果が限界を迎えつつあると推測されました。休息時に安心して休める環境づくりに十分配慮し、好物の積極的な給与によって採餌を促してきました。

安楽死処置の判断と実施

2021年8月
 これまでの状況と今後の推移を改めて検討した結果、以下の理由から、現状の苦痛を治療により取り除くことは不可能であり、むしろ悪化していくことが予想されました。そのため、無益な苦痛を長引かせることなく安楽死処置をすることが、チルーにとってのアニマルウェルフェア(動物福祉)を確保することになると判断しました。

・がんの摘出などの外科的方法は、不可能である。
・全身に転移したがんへの投薬による縮小は見込めず、抗がん剤治療は高齢のチルーにとって今後のQOLを損なう。
・活動量や採食量の減少はがんによる痛みが原因と推定され、鎮痛剤の効果が限界を迎えている。
・呼吸が荒くなってきており、今後呼吸困難が進行すると考えられる。
・今後、遠からず起立不能になることが考えられ、その場合、床ずれの発生から新たな苦痛と敗血症を生じる可能性が高い。

2021年9月6日
 苦痛を感じさせることのないよう配慮した方法で、安楽死処置をおこないました。

今後

 処置後、すみやかに解剖をおこない、病変などについて調査をおこなっています。解剖により得られた貴重な情報の数々は、より多くの動物を救うため今後の獣医療に活かしていきます。
 現在「子ども動物園すてっぷ」で飼育中の2頭のブタも高齢化していますが、引き続き、動物の体調を優先した飼育をおこなっていきます。

 なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、動物へのお花などのお供えの受付は中止しています。お気持ちを受け止める場所を設けることができず、申し訳ありません。

 このたびはたいへん悲しいお知らせとなりましたが、ご理解いただければ幸いです。


ブタ(アグー)の「チルー」

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〔上野動物園 教育普及課〕

(2021年09月06日)



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