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休館中のバードハウスから(2)
 └─ 2020/10/06

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため休館していたバードハウスですが、2020年10月5日(月)からバードハウス1階の展示を再開いたしました!

 2回に分けて休館中のバードハウスのようすをお届けしている「休館中のバードハウスから」、最後のトピックスはカンムリシギダチョウについてです(前回の「休館中のバードハウスから(1)」はこちら)。

 カンムリシギダチョウは「シギ」でも「ダチョウ」でもありません。シギダチョウ目シギダチョウ科の鳥で、オス・メスともに茶色く、頭の上には「冠羽」と呼ばれる羽がピンと立ち、見た目もシギやダチョウとはまったく異なります。雌雄は同じ色をしており、外見で見分けることはできません。

 バードハウスではここ数年、ある特定の2羽がペアになって行動をともにしていましたが、繁殖には至っていませんでした。今年も春ごろから交尾行動や地面を掘る営巣行動を積極的におこなっていましたが、肝心の産卵はありませんでした。

 カンムリシギダチョウは一夫多妻性で、オスがつくった巣に複数のメスが産卵することがよくあります。そこで、巣内に本物の卵に似せてつくった「擬卵(ぎらん)」を1個入れ、追加の産卵をするかようすを見ることにしました。数日後、1羽が抱卵を始めました。しかし、残念ながら産卵はしていませんでした。さらに数日経つと、なんと2羽が1個の擬卵を抱卵するようになりました。

カンムリシギダチョウの巣に入れた擬卵
擬卵を抱く2羽

 鳥類の繁殖生態はさまざまで、営巣・抱卵・育雛を「オス・メスで協力しておこなう種」や「オスかメスの片方だけがおこなう種」、さらには「自分ではおこなわず別種に任せる種」などがあります。カンムリシギダチョウは、オスだけが営巣・抱卵・育雛をおこなうタイプで、メスは参加しません。そのため、種の特性からするとこの行動から2羽が雌雄のペアである可能性が低くなってしまいました。

 そこで、2羽に性別判定の検査をおこなったところ2羽ともオスであることが判明し、外見に違いのない種の性判別の難しさを改めて実感しました。

 野生では天敵が近づくと地面に伏せ、茶色い羽を背景に溶け込ませて隠れることが多く、観察が難しいとされています。見た目は「地味」ですが、笛のようなきれいな声で鳴きますので、ぜひその姿や声を観察してみてください。

 カンムリシギダチョウはバードハウス1階で展示しています。

※記事公開時はバードハウス出口近くのバードケージ(左から2つ目)でも展示していましたが、2020年10月25日にバードケージでの展示は終了しました。



地面にとけこむ茶色い羽

〔上野動物園東園飼育展示係 阿尾佳美〕

(2020年10月06日)
(2020年10月26日:バードケージでの展示終了について追記)


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