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ユーラシアカワウソ「チロル」とその子どもたち
 └─2020/03/29

 上野動物園では現在、ユーラシアカワウソのメス「もも」と「さくら」を公開しています。彼女たちの母カワウソ「チロル」(2009年オーストリア生まれ)と上野動物園に来た子どもたちをご紹介しましょう。

 チロルはオスの「ドナウ」とともに2011年3月、東日本大震災で被災したふくしま海洋科学館(アクアマリンふくしま)から上野動物園へ一時的な受け入れ個体としてやって来ました。アクアマリンふくしまは同年7月にふたたび開園し、2頭は福島に戻って行きました(下記記事参照)。

 2012年、チロルとドナウのあいだに初めて子が生まれました。生まれたメス3頭、「うめ」「もも」「さくら」は翌年、上野動物園に来園しました。チロルはこれまで計12頭の子どもを育て上げ、子どもたちは日本だけでなく世界の動物園でもくらしています。井の頭自然文化園で現在飼育している「はな」(メス)もチロルの子どもです。


カゴをつかった給餌器

 2018年に「うめ」が那須どうぶつ王国に移動した後、上野動物園のユーラシアカワウソはももとさくらの2頭になりました。おとなになると、メスどうし、あるいはオスどうしのカワウソは、同居できないほど喧嘩をすることもあるようですが、今のところ、ももとさくらは大きなトラブルなく過ごしています。えさの時間には小競り合いをすることもあるので、竹筒や金網で作った給餌器を使ったりして、それぞれが集中して食べられるように気をつけています。


アクアマリンいなわしろカワセミ水族館の企画展「かわうそ」会場

 現在チロルはドナウと離れ、アクアマリンいなわしろカワセミ水族館に移動し、2015年の子どもの「ゆき」(メス)と同居しています。同水族館では2020年3月20日から6月末まで、企画展「かわうそ」を開催中です(くわしくはこちら)。会場には「チロルのりれきしょ」として、子どもたちを紹介するパネル展示もあります。

 企画展担当の方から以下のコメントをいただきました。「ゆきは今年の8月で5歳になるのですが、母親のチロルにべったりで、いつも2頭いっしょに行動しています。チロルもいまだにゆきの面倒を見ているようすで、健康診断のため一時的にわけたときにはフィーフィーと鳴いてゆきを呼んだりします」

手前がチロル、奥がゆき
企画展でのももとさくらの紹介パネル

 今回、企画展への協力として、ももとさくら2頭のパネル用紹介文を考えているうちに、東日本大震災から9年という歳月が過ぎたこと、この間に私たちだけでなく動物もさまざまな経験を重ね、つながりを結びながら、それぞれの場所でくらしていることに改めて気づかされました。

 上野動物園は新型コロナウイルス感染症への対応として2020年2月29日から臨時休園中ですが、動物の保全活動や飼育展示は他の園との協力を通して続いていきます。今後も園内外での取組みを発信していきます。

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〔上野動物園東園飼育展示係 中村壮登〕

(2020年03月29日)


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