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マレーグマの「蟻塚」をリニューアル
 └─2020/03/29

 上野動物園のマレーグマ運動場には蟻塚の模型があります。これはマレーグマのための「フィーダー」、つまり給餌のためのしかけです。

 野生動物は一般に食べ物を求めて歩き回りますが、動物園ではえさが準備されているので探す必要がありません。目の前にえさが与えられるとあっという間に食べてしまい、ウロウロと動き回って退屈そうにしていることもあります。そこで上野動物園では動物たちがなるべく時間をかけて食べられるよう、工夫をこらしたさまざまな種類のフィーダーを使っています。マレーグマの蟻塚には透明の筒がついていて、えさはその中に置くしくみです。

 蟻塚は、マレーグマがいる施設「クマたちの丘」が完成した2006年から長年使われてきたため、筒の表面は傷で曇っていました。そこで、今年度の動物園サポーター制度による資金を利用し、透明な筒をいくつか購入しました。また、筒が傷ついても交換できるよう改修したおかげで、筒の中がよく見える状態を保てるようになりました。

旧蟻塚の筒。傷で曇っている
新しくなった蟻塚。筒を一新した

 新たな蟻塚では、えさの内容によってマレーグマの食べ方の違いを見ることができます。ハチミツを筒の内側にまんべんなく塗っておくと、甘いハチミツが好物なマレーグマは匂いに気がついてすぐ近づいてきます。そして舌を長く伸ばし、ハチミツを舐め取っては口の中に入れ、とても器用に食べます。

 また、クマ用の固形飼料や落花生など小さな粒状のえさを筒の中に置くと、匂いでえさを見つけたマレーグマは、狙いを定めて舌を伸ばし、えさを舌にくっつけるようにして口へ運びます。

 では、一口大のリンゴではどうでしょうか。落花生のように軽くはないので、長い舌が届いても引き寄せるのは難しそうです。そんなときは、前足を使います。また、ハチミツを前足の腕や手の部分に付けて舐めているときもあります。

筒の中に舌を伸ばしてハチミツを舐めている
クマ用の固形飼料と落花生を入れたところ

 運動場では蟻塚だけでなく、丸太の下のえさを掘り出したり、鼻を動かしながらえさを探していたり、マレーグマのさまざまな行動が見られます。現在、上野動物園は臨時休園中ですが、こうした工夫を重ね、動物の心身の健康が維持できるよう努めています。再開園の際には、ぜひマレーグマのこうした行動にも注目して観察してみてください。

〔上野動物園東園飼育展示係 宮沢彩〕

(2020年03月29日)


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