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鳥班レポート2017──今年繁殖した鳥たち[4]クロツグミ
 └─2017/10/13

 上野動物園の鳥班がお伝えする2017年のレポート、今回は日本に飛来する渡り鳥「クロツグミ」です。

 クロツグミはスズメ目ツグミ科の鳥で日本には「夏鳥」として飛来します。雌雄ともに腹部が白く、三角形の黒斑がありますが、メスは背中から尾にかけてオリーブ色、オスは和名のとおり黒色をしています。オスは繁殖期にとても美しい声で鳴くことでもよく知られています。

 上野動物園では「日本の鳥II」でクロツグミを飼育していますが、今年(2017年)約10年ぶりに繁殖し、ひなが育ちました。

親鳥。奥がメス、手前がオス
今年育ったひな

 「日本の鳥II」の展示エリアではクロツグミの雌雄がペアになり、繁殖行動が確認されてはいましたが、なかなかひなが育つにはいたりませんでした。展示エリアでは複数の種が同居しているため、クロツグミにかぎらず小鳥たちは、他種に邪魔されたりして、落ち着いて繁殖できる環境ではないのです。

 そのため、「日本の鳥I」の展示エリアの裏側には「繁殖棟」があります。繁殖棟は日本の鳥IやIIでペアとなった種を隔離し、繁殖させるための施設です。昨年(2016年)、展示エリアでペアになったクロツグミを繁殖棟に移動し、繁殖を目指すことにしました。

 2016年5月に繁殖棟に移ったクロツグミのペアは6月には営巣。その後、産卵・孵化・育雛まで成功しましたが、巣立ったひなは残念ながら3日後に死亡しました。しかし、2017年も同じペアで繁殖をさせるため、繁殖終了後も繁殖棟で飼育を続けました。


今年育ったひな

 2017年は5月中旬から営巣を開始し、孵化まで確認できましたが、育雛の途中で親鳥がひなにえさを運ばなくなり、ひなは巣立つ前に死亡してしまいました。その後、6月8日から同じペアが同じ巣で再び繁殖行動を始め、ひなの世話もよくしていましたが、孵化確認後10日目でひなが巣立ってしまいました。孵化後10日では巣立ちには少し早いため、ひなを隔離して人工育雛に切り替え、人の手で育てることにしました。

 その結果、人工育雛開始当時は37グラムだった体重も60グラムを超え、羽毛も換羽を経て灰色の羽に変わりました。2017年9月には日本の鳥IIの非展示エリアに移し、公開に向けて訓練中です。羽毛が灰色で「黒くないクロツグミ」の展示デビューは2017年10月中旬、まもなくの予定です。

 次回の鳥班レポートは、季節によって羽色を変化させる「あの鳥」です。

鳥班レポート2017──今年繁殖した鳥たち[1]カワセミ(2017年9月22日)
鳥班レポート2017──今年繁殖した鳥たち[2]ミヤコドリ(2017年9月29日)
鳥班レポート2017──今年繁殖した鳥たち[3]カンムリコサイチョウ(2017年10月6日)

〔上野動物園東園飼育展示係 吉村映里〕

(2017年10月13日)


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