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鳥班レポート2017──今年繁殖した鳥たち[3]カンムリコサイチョウ
 └─2017/10/06

 上野動物園東園のバードケージで飼育しているカンムリコサイチョウは、アフリカ南部から北東部の沿岸などに生息するサイチョウのなかまで、野生ではおもに昆虫や小動物などを食べています。

 2013年6月、井の頭自然文化園から2002年生まれのメスと2000年生まれのオスが来園しました。しかし2羽は繁殖経験がなく、オスが巣に出入りする行動は見られたものの、繁殖にはいたりませんでした。

 カンムリコサイチョウは国内の飼育数が少なく、メスは上野にしかいないため、繁殖を目指して2016年からえさや環境を改善しました。その結果、2016年、2017年と続けて自然繁殖に成功しました。工夫と繁殖の経緯をお伝えします。

果物や野菜を加えたえさ
繁殖期のえさ

 まずは、えさの改善です。これまでコサイチョウには冷凍コオロギやマウスなどの動物性のえさを一年中与えていましたが、繁殖を促すために2016年4月中旬から動物性のえさを減らし、果物や野菜などを加え、えさを選ばせるようにしました(写真)。すると、すぐに食べ始め、とくにトマトやブルーベリーなどを好み、完食する日もありました。しかし、4月下旬になると果物や野菜を残し始めたため、5月初旬に果物と野菜は中止し、動物性のえさの種類や量を増やしていきました。

以前の巣箱
改良後の巣箱。オスが巣穴を広げているところ

 あわせて巣箱も改良しました。以前の巣箱は巣穴が大きく、また来園者から丸見えの状態でした(写真)。そこで、巣箱の向きを90度回転させるとともに、巣穴は自由に開けてもらおうと考え、コルクボードを設置しました。コルクボードは、カンムリコサイチョウの体が通れるひし形のエリアをあらかじめ彫刻刀で薄く削っておき、穴を開けやすいようにしました。また、最初のとっかかりとして1cm四方の穴も開けておきましたが、2週間経っても無反応だったため、穴を大きく拡げてやったところ、オスが巣穴を広げ始めました(写真3)。


2016年に繁殖したひなとオス親

 2016年6月8日、メスが巣にこもり始め、つづいてオスが懸命にメスにえさを運び続けるようになりました(サイチョウ類のメスはひなが成長し巣立つまで巣の外に出ず、オスがえさを巣に運ぶという習性があります)。9月4日には88日ぶりにメスが巣の外に現れ、2日後に1羽のひなが巣立ちました。最初はオス親がひなにえさを運んでいましたが(写真)、残念ながら9月14日にオス親が腎臓疾患で急死したため、ひなは自分でえさを食べるようになり順調に育ちました。

 翌2017年5月初旬、メスと亜成鳥(2016年生まれの個体)の関係に変化が見られるようになりました。亜成鳥はケージ内を旋回してよく鳴き、成鳥のオスのような行動を始めたのです。メスも鳴き交わし、2羽はペアになったようです。新しいオスを迎え入れる計画も立てていましたが、メスが高齢であることを考慮し、このままようす見ることにしました。

 そして5月10日からメスが巣にこもり、亜成鳥は懸命にメスにえさを運び始めました。7月27日に73日ぶりにメスが巣の外に現れ、8月9日に1羽目、翌日に2羽目が巣立ちました。

 現在、両親とひな2羽がいますが、ひなの体の大きさは親とほぼ変わりません。でもよく見ると、ひなの目は薄青色で、くちばしは薄い橙色をしています。成鳥と見くらべてみてください。

 上野動物園の鳥班からお伝えするレポート、次回は特徴的なさえずりで知られる夏鳥です。

鳥班レポート2017──今年繁殖した鳥たち[1]カワセミ(2017年9月22日)
鳥班レポート2017──今年繁殖した鳥たち[2]ミヤコドリ(2017年9月29日)

〔上野動物園東園飼育展示係 宇野なつみ〕

(2017年10月06日)


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