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ライチョウの擬卵作りに挑戦!
 └─2017/04/07

 上野動物園では環境省が進めるライチョウ保護増殖事業の一環として、域外保全を目的に2015年からライチョウの飼育を始めました(お知らせ)。

 2016年に孵化したオス3羽とメス1羽は元気に育ち、オスたちは白い「冬羽」から黒色や茶色の「夏羽」に変わり始めました。ライチョウの夏羽は繁殖期に見られる「繁殖羽」です。順調に換羽すれば繁殖の可能性があります。

 換羽を始めたライチョウたちが順調に繁殖できるよう、飼育担当班はさまざまな準備を進めています。その一つが「擬卵づくり」です。

 擬卵とは本物の卵に似せて作ったニセモノの卵のことです。ライチョウにかぎらず、飼育下の鳥類を繁殖させるとき、擬卵はさまざまな局面で使われます。たとえば、親が抱卵している卵を擬卵に置き換え、取り上げた卵が有精卵かどうかを確認したり、自分の産んだ卵を割ってしまうくせのある親鳥の場合も擬卵と交換したりします。

 また、事情により繁殖させることができない場合、擬卵を抱かせて産卵を抑制させることもあります(ほとんどの鳥は1回に産む卵の数が決まっており、その数に達すると抱卵に入るため、擬卵であっても加えることによって産卵を押さえることができます)。


ライチョウの擬卵作り。色付け中

 ただし、鳥たちに擬卵を本物の卵と錯覚してもらうためには、質感を本物に似せることが重要です。しかし技術がなければ、擬卵はなかなか作れるものではありません。その技術を継承するために、若手職員が先輩職員から教えを受け、ライチョウの擬卵作りに挑戦しました。

 擬卵作成はまず、基盤となる型作りから始めます。上野動物園でライチョウはまだ産卵していないため、型作りにはスバールバルライチョウの擬卵を使用しました。型は半分ずつ2日間で作り上げ、作成した型に樹脂を流し込みます。

作成したライチョウの擬卵
本物のライチョウの卵

 短時間で固まった樹脂を型から取り出し、ヤスリで磨きをかけた後は色付けです。本物の卵に似るか否かは、この色付けで決まります。2016年に生息域内で撮影したライチョウの卵の写真を参考に、9名の職員で色付けに挑戦しました。この擬卵をメスが気にいってくれるかどうか……結果は繁殖期後に報告します。

関連ニュース
・「日本産ライチョウが孵化しました」(2016年6月27日)
・「ライチョウのひな、順調に育っています」(2016年12月16日)

〔上野動物園東園飼育展示係 吉村映里〕

(2017年04月07日)



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