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アカカワイノシシの石運び
 └─2015/12/25

 上野動物園西園の小獣館横の動物舎にアカカワイノシシを展示しています。アカカワイノシシはアフリカのサハラ砂漠以南、西アフリカの熱帯雨林の沼沢地や河川などの水辺近くに生息しています。体の色が赤褐色なのが名前の由来です。


 室外の運動場を見てみると、あちこち穴が掘られ、でこぼこになっています。アカカワイノシシは鼻を使って地面を掘るのが得意なのです。そうやってえさを探すのでしょう。その習性が飼育下でも遺憾なく発揮され、えさがないところでもせっせと穴を掘っているわけです。

 運動場にえさは埋まってはいませんが、40〜50センチも掘ると、水はけをよくするために埋められている石に到達します。われらがアカカワイノシシは、この石をくわえ、運動場のワイヤーメッシュの網目を通して外に出しています。決められた場所から外に出すので、そこには“石塚”ができています。


 初めて“石塚”を見たとき、まさかイノシシがつくっているとは思わず、なぜこんなところに石がまとめて捨てられるのだろうと首をかしげたものです。

 ところで、室外の運動場には池があります。アカカワイノシシは夏の暑い日には池に入って水浴びしたり、池のまわりに穴を掘って水を入れ、ドロドロのヌタ場を作って泥浴びをしたり、なかなか忙しく過ごしています。


 ある日、アカカワイノシシがやけに長時間水を飲んでいました。何分ものあいだ、鼻面を池に入れ、口をもごもご動かしています。いくらなんでも水を飲んでいるのではないことは予想がつきます。

 いったい何をしているのか……さらに見ていると、すっと池から離れたイノシシは柵のそばまで来て、ワイヤーメッシュに口を寄せると、コロリと口から石を出しました。なるほど石を口に入れ、そうした意図はないとは思いますが、洗うように口の中で転がしていたのでした。

 穴掘り、石掘り、石洗い、“石塚”作り、さらには運動場で丸太ころがし……上野動物園のアカカワイノシシは今日も忙しげに過ごしています。

〔上野動物園西園飼育展示係 木村隆司〕

(2015年12月25日)



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