ニュース
ニホンザルのえさと運動量、飼育下での観察結果を学術誌に発表
 └─2015/12/18

 動物園の役割の一つが「動物に関する研究」です。飼育動物を研究し、野生動物の保全に役立てたり、飼育管理技術を向上させたりすることがおもな目的です。 

 今回、上野動物園のサル山にくらすニホンザルを対象に研究をおこない、その成果を国際学術誌「Zoo Biology」(第34巻第3号[2015年5・6月号]pp.255-261)に論文として発表しました。論文タイトルは、「飼育下のニホンザルにおいて餌エネルギーの季節変化が体重におよぼす影響」です。

 野生では入手できる食物が豊富な季節や不足する季節があり、それにともなって栄養状態が変化します。一方、飼育下でえさの季節変化がなくなり、年中同じようなえさを食べられる環境では肥満になりやすく、動物園でも起こりやすい問題といえます。 


サル山に設置した体重計から体重を読み取り、記録する

 そこで、上野動物園のニホンザルに与えるえさに季節変化をつけ、体重の変化を調べることにしました。野生のニホンザルの環境を模して、春と秋は栄養価を高く、夏と冬には栄養価を低く設定し、サル山内にある体重計を読み取って記録しました。調査期間は2011年4月から2014年3月です。結果は予想通り、体重は秋にピークを迎え、冬にもっとも減少しており、まさしく野生のニホンザルの栄養状態を再現できたといえます。 

 しかし、栄養価を低く設定した夏にも体重が増えていました。夏は日陰を利用することが増え、その結果運動量が減り、えさのエネルギー量よりも、運動で消費するエネルギー量のほうが低かったためだと考えられます。つまり、野生と同じ栄養状態を再現するには、運動量の操作も必要だということです。 

 この結果は、しっかりとした調査と評価によって明らかになりました。動物園でこうした情報を蓄積することによって飼育管理技術を向上させ、動物を心身ともに健康に飼育していきたいと考えています。 

 なおこの研究論文は、ニホンザルを飼育を担当する職員の他に、京都大学霊長類研究所の研究者の方や、動物園内で活動する東京動物園ボランティアーズの方々とともおこない、連名で発表しました。研究者の方、ボランティアの方と協力することで論文が発表できたということも、今回の研究の大きな意義の一つです。 

「Zoo Biology」第34巻第3号[2015年5・6月号]に投稿した論文の要旨掲載ページ(英文)

・論文に関する情報 Aoki, K., Mitsutsuka, S., Yamazaki, A., Nagai, K., Tezuka, A. and Tsuji, Y. (2015), Effects of seasonal changes in dietary energy on body weight of captive Japanese macaques (Macaca fuscata). Zoo Biol., 34: 255-261. doi: 10.1002/zoo.21210

〔上野動物園東園飼育展示係 青木孝平〕 

(2015年12月18日)


ページトップへ