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アカガシラカラスバトの人工育雛
 └─2015/07/31

 アカガシラカラスバトという鳥をごぞんじですか? カラスバトの一亜種です。この鳥は、小笠原諸島だけに生息している固有亜種で、森の中でひっそりとくらしています。その生態は、ここ10年ほどで徐々に解明されてきました。

 現在、生息地の環境変化によって野生生息数が減り、保全活動が進められています。上野動物園と多摩動物公園でも、アカガシラカラスバトの保全をめざし、飼育と繁殖に取り組んでいます。現在、上野動物園では27羽を飼育しており、そのうち1羽は人工育雛、つまり人の手によって育てているところです。その経過をご紹介しましょう。

 孵化したのは今年(2015年)6月20日。孵化したばかりのひなは、人の手のひらに乗るほどの大きさで、目は開いておらず、羽毛も生えていない弱々しい姿です。えさは豆乳とひな用粉末飼料を混ぜた液体です。給餌の際は、ゆっくりと、少しずつ食道に流し入れます。

  
1日齢、11日齢、25日齢

 孵化して1週間経つと、小さな声でえさをねだるようになります。その声は、ひなの口元まで耳を寄せないと聞こえないほど小さいのですが、担当者としては、この声(要求鳴き)を確認できたときが、初めてほっとする瞬間です。

 2〜3週目は食べ盛りの期間。体重もぐんぐん増え、羽毛が生えそろってきます。孵化後1か月を過ぎると自分でえさを食べ始め、見た目もハトらしくなります。最近は、暑さに負けず羽ばたき練習! もうすぐひとり立ちです。

 
34日齢、35日齢

 ひなは園内の繁殖施設にいるため、みなさんにご覧いただくことはできませんが、東園のキジ舎では2羽のアカガシラカラスバトを展示しています。上野動物園でその姿を間近で見て、小笠原という「近くて遠い島」にこんな貴重な鳥がいることを知っていただきたいと思います。

〔上野動物園西園飼育展示係 坂下涼子〕

(2015年07月31日)



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