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ケープペンギンの出国検疫
 └─2015/07/04

 動物病院は、園内の飼育動物の病気の治療と健康管理をしていますが、ほかにも重要な仕事があります。動物園に新しく来た動物が悪い病気をもっていないか、健康な状態であるかを検査し、園内の動物に病気が移らないようにすることです。これを「検疫」と言い、ほかの動物園から来た動物は、「検疫舎」で一定期間飼育して各種検査をおこない、必要な場合は治療をほどこし、健康な状態にしてから展示施設に出します。

 一方、動物園から出て行く動物は、通常は受け入れ先の動物園で検疫をしますが、日本国外に輸出するときは、各種感染症にかかっていないことを証明する書類(健康証明)を相手国から求められることがあります。その場合は、輸出する動物を飼育場所から動物病院の検疫舎に隔離し、相手国の求める期間(通常21日から30日間)検査をします。これを「出国検疫」といい、この期間は、輸出する動物以外の動物を検疫舎に入れられません。

 今回、上野動物園からシンガポールの動物園にケープペンギン3羽を輸出することになり、出国検疫をしました。農林水産省の動物検疫所から検疫場所として指定を受けた場所でケープペンギンを飼育し、鳥インフルエンザ等の病気がないか検査します。この間、外から新たな病気を持ち込まないように、検疫室内に入る獣医師は、使い捨ての帽子・マスク・手袋・上着・ズボンを着け、専用の長靴に履き替えて飼育作業をしました。


検疫中のケープペンギンの管理も獣医師の仕事

 出国検疫中は、検疫舎にほかの動物を入れられないので、病気で入院する動物が出ないように祈っていましたが、祈りが通じたようで、今回の出国検疫期間の21日間、入院が必要になる展示動物はありませんでした。また、ケープペンギン3羽について、臨床検査機関での検査結果はいずれも陰性で、健康が確認できたので、成田空港から無事シンガポールに旅立たせることができました。

 逆に海外から動物を輸入する場合は、日本政府が輸出国との間で定めた衛生条件のある動物については、国内に入る際に輸入検疫を実施することとなります。

 このように動物園では、展示動物を海外の動物園とやりとりし、園内の飼育動物種の充実に努めています。動物病院の獣医師は展示動物の治療だけをおこなうと思っていらっしゃる方が多いと思いますが、このような仕事もしているのです。

〔上野動物園動物病院係 野瀬修央〕

(2015年07月04日)


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