ニュース
江戸時代の動物12匹、上野動物園に蘇る──五重塔の改修が終わりました
 └─2014/09/26

 上野動物園内に重要文化財の五重塔があることをごぞんじでしょうか。

 この塔は寛永8年(1631年)、のちに初代大老となる土井利勝によって、寛永寺の境内である上野東照宮内に建立されました。当時は神仏習合の考えにもとづき、神社である東照宮も、寺院である寛永寺の境内に作られたのです。

 この五重塔は寛永16年(1639年)に花見客の失火で焼失しましたが、同年、利勝により再建されました。その後、明治の神仏分離政策の結果、五重塔は寛永寺に帰属することになりましたが、昭和33年(1958年)に寛永寺から東京都に寄付され、現在、上野動物園の敷地内にその姿をとどめています。

 この旧寛永寺五重塔ですが、こちらの記事でお伝えしたとおり、2013年7月29日から改修に取りかかり、翌年8月31日まで一年をかけて工事をおこないました。初層の漆・彩色工事を約40年ぶりにおこなった結果、鮮やかな色彩に蘇りました。また、木部の補修を中心に修理をおこないました。

 漆の塗り替えにあたって、まず漆の掻き落としを実施しました。古い漆を掻き落としたところ、想定以上に木部が腐食していました。とくに西面の柱は虫害による劣化が著しかったので、支えとなる補強をしたうえで旧柱材を一部切除し、新材に取り換えました。切り取った旧材は、工事の記録資料として、日比谷の東京グリーンアーカイブスに保管してあります。

 初層の軒下には、蟇股(かえるまた)という十二支の彫刻がありますが、すべて取り外し、日光の工房で塗り直しをしました。また、四隅の龍の彫刻は、現場で塗装を掻き落とし、彩色を施しました。

 また、木部の劣化が多数あったため、判明した箇所は補修をしましたが、大正7年(1918年)の半解体修理以来約100年が経過し、根本修理も今後の課題です。

 長らくお待たせしましたが、文化の秋、美しく蘇った五重塔の鑑賞に、上野動物園にぜひ足をお運びください。

写真上から:
・工事前
・工事後
・漆を書き落とした「龍」
・彩色を施した「龍」

〔東京都建設局 東部公園緑地事務所工事課 中山桜〕



ページトップへ