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ゴリラのフィーダー(給餌器)
 └─2013/01/11

 上野動物園では、ニシローランドゴリラの生活に刺激を与え、運動量を増やすために、放飼場での給餌の方法を変えました。

 放飼場の上から個体ごとに餌を投げ与える従来の方法は、カロリーはコントロールできますが、採食時間はあまりかかりません。本来1日の大半を採食にかけるゴリラにとっては、あまり好ましい方法ではありませんでした。

 そこで始めたのが、放飼場にいる全頭をいったん室内に収容し、飼育担当者が放飼場に餌をセットし、再びゴリラたちを出すという方法です。餌をワラや袋の中に隠したり、竹を立てて野菜を差し、木に実ったものを採食できるようにしたり、さまざまな方法でセットします。これで格段に運動量、採食時間は増えましたが、それでもまだまだ足りません。

 そこで、ほかの動物でもよく使うフィーダー(給餌器)を考えました。ただ、ゴリラたちは少し厄介なところがあって、一度習得してしまうと餌を簡単に取り出してしまい、楽しみもしなければ使いもしなくなってしまいます。つまり飽きやすい……。そのため、ゴリラたちが放飼場に出るたびに違うフィーダーに餌を入れ、中身も変更することで、彼らの動きは一気に変わりました。

 中でも一番難易度が高いのが、竹に細工をしたフィーダーです。丸い竹筒に節ごとに穴を開け角度を少しずつ変えながら餌を出すもので、難しいだけでなく重量もあり、私の意地悪自信作です。

 最初に手にしたのはメスの「コモモ」(3歳)でしたが、思うように取り出せませんでした。その後やってきたオスのハオコ(19歳)は、竹筒を手に取り眺めると、すぐに理解したようで、両手を巧みに使い、簡単に餌を取り出しました。そのようすをじっと観察していたのがコモモで、ハオコが去った後、ハオコのマネをして竹筒を何度も振ったりするしぐさが見られました。子どもは父親の背中を見て、いろいろ試行錯誤を繰り返しながら成長していくのだろうと思いました。

 変化の少ない動物園ぐらしのゴリラたちに、楽しんだり、挑戦したりできるものを提供するため、飼育係も日々頭を使っています。

写真上:フィーダーに挑戦する「コモモ」
写真下:「ハオコ」の技を「コモモ」が観察

〔上野動物園東園飼育展示係 木岡真一〕

(2013年01月11日)



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