上野動物園のアイアイ「ソア」が、2012年5月11日に出産しました。妊娠期間は158日で、ソアは6頭目のお母さんになりました。
出産当日、ソアはいつもの時間には巣箱から出てこず、遅れて出てきました。お腹はへこみ陰部が赤く腫れていたので、「出産した!」と瞬時に思いました。
その後、午後12時24分に子が巣箱からはい出てきました。ソアがくわえようとしましたが、子はステージ(巣箱の前に設置してある板)から落ちそうになり、へその緒が絡まって頭を下にした宙ぶらりん状態になったため、飼育係が部屋に入って落ちないところに子を置き直しました。しかし、またソアがくわえようとして、今度は麻袋のハンモックに2回ほど子を落としてしまいました。子はへその緒と胎盤がついている状態だったため、再度飼育係が取り上げ、部屋の外でへその緒の切断と雌雄判別、体重測定を実施し、巣箱の奥に戻しました。
子はメスで、体重は120グラムでした。今までのアイアイの子の中では出生時の体重が一番重く、その後の成長も早く、かなりやんちゃな子です。名前は「ティーア」と付けました。マダガスカル語で「愛しています」という意味の言葉です。
子は通常生後2か月過ぎくらいまで巣箱の中にいるものですが、ティーアは生まれた日から外にはい出てきて、お母さんのソアがくわえて戻すという毎日でした。
今では、戻しても戻しても外に出てきてしまうので、母親ソアは諦めたのか、子をひとり残して、自分だけ巣箱に入って休んでいます。ただ、ティーアが少しでも鳴くと、巣箱から跳び出てきて、すぐにティーアのもとに駆け寄ります。さすがベテランお母さんです。
ティーアの手は小さいのですが、生まれたときからアイアイの特徴の一つである針金のように細長い中指はもっています。その指で木をトントンと叩くタッピングという行動をすでにおこなっていて、コウモリのような大きな耳を前に傾け、叩いた木からの反響音を聞いています。その姿は、小さいながら立派なアイアイです。ぜひティーアの今後の成長ぶりにご注目ください。
写真:ティーア
〔上野動物園西園飼育展示係 下重法子〕
(2012年08月10日)
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