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熊猫的新聞(パンダニュース)──16
 ジャイアントパンダの「筋トレ」
 └─2012/02/03

 2012年1月から、ジャイアントパンダのリーリー(オス)とシンシン(メス)の足腰の筋肉を鍛える「筋肉トレーニング」をおこなっています。屋外放飼場や室内展示場で、とくに日時は決めずに実施しています。

 トレーニングに使う道具は、長い竹竿1本のみ! 非常にシンプルです。長い竹竿の先に、細かく切ったリンゴや団子を刺し、それを2頭の頭上で左右に動かして、一定時間後ろ足だけで歩行させます。パンダの両後肢歩行は、木登りのときなどによく見られる動きなので、無理な姿勢ではありません。

 この筋力トレーニングは、リーリーとシンシンが生まれた中国四川省の臥龍パンダ保護センターでも日常的におこなわれています。台湾の台北動物園では、先端に餌を結んだロープを天井から吊るし、パンダを立たせて食べさせたり、施設によって、さまざまな方法が取られています。

 通称「筋トレ」といっていますが、主な目的は運動量を増やすことにあるので、「筋肉エクササイズ」というのが正確なところです。動物園の環境は野生と比べ活動できる面積が狭く、毎日の生活も単純になりがちです。また、パンダは繁殖適齢期を迎えると、ほかの個体と一緒にできず単独で飼育することになり、どうしても運動量が減ってしまいます。そこで動物園では、飼育環境を野生の環境に近づけるよう工夫したり、人為的な刺激を与えることで運動を促したりしています。

 また繁殖シーズンに向けて後ろ足を鍛えるという目的もあります。パンダの繁殖において重要なポイントとなるのが、オスとメス両方の後ろ足の筋力です。後ろ足の踏ん張る力や支える力が足りないと、交尾をうまくおこなうことができません。繁殖シーズンに限らず、ふだんから筋力を鍛えることが大切になります。

 開始当初は、歩行はさせず、その場で立ち上がることができたら餌を与えるという簡単な方法からスタートし、徐々に慣らしていきました。
 当初オスのリーリーは、戸惑いもあったせいか、なかなか上手に立つことができませんでした。屋外ではすぐに近くの木に寄りかかって一休みしたり、室内のガラスを支えに蟹のように横歩きをしたりしていたせいか、すぐにコツを覚え、今では支えなしに歩くことができています。
 一方メスのシンシンは、ここでも要領の良さを発揮し、すぐに一歩一歩ゆっくりと歩くことができました。始めは後ろ足や胴体をプルプル震わせ、おぼつかない感じでしたが、今ではしっかりと歩き、室内展示場の端から端までくらいの距離は余裕で歩けます。2頭の飲み込みの早さに、またまた驚かされました。

 実施時間は毎日決まっていませんが、もし見かけた際は、ぜひ2頭の歩くようすをみてください。2頭の歩行ポーズの違いや、パンダの胸部から腹部にかけての毛の色など、ふだんは見づらい身体の部分にも注目してみると面白いでしょう。

写真上:シンシン(メス)の見事な立ち姿
写真下:飼育担当者も大変なエクササイズ

〔上野動物園東園飼育展示係 阿部展子〕

(2012年02月03日)



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