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カバ「サツキ」の死亡と「ジロー」の近況
 └─2011/04/29

 2011年4月16日午後7時過ぎ、メスのカバ「サツキ」が死亡しました。40歳を目前にしての出来事でした。

 サツキは1971年5月20日、デカオとナゴヤの1番目の子どもとして生まれました。現在の施設より前に西園地区にあった「アフリカ生態園」の最後の生き残りでした。

 3月11日に発生した大地震の日、大きな揺れや何回も起きた余震の中、サツキは放飼場のプールから上がるときに左前足を踏み外し、痛めてしまいました。また、高齢などの理由により皮膚が荒れ、それが原因で化膿性関節炎になってしまいました。

 地震直後は餌をほとんど食べませんでした。2006年に起きた中越地震のときにも餌を食べなくなったことがあるので、数日後に回復すると考えましたが、精神的ダメージが大きく、また脚が痛いため陸上で立っていられず、餌をほとんど食べられなくなりました。そのためサツキがプールに入っているときに、プールサイドからおからやペレットを団子にしたものや青草、乾草などを口の中に放り込んで与え、併せて痛み止めの投薬もおこないました。

 カバ来園100周年の今年、カバ祭りなどのイベントが進行中でしたが、地震の影響で上野動物園は休園になりました。休園期間中徐々に症状は改善し、4月の初めには長い時間立ったまま餌を食べられるようになったのですが、再び悪化、オスのジローと部屋を分け単独飼育にして負担が少ないようにしていました。しかし4月中旬にはいよいよ餌を食べなくなってしまい、ついに16日死亡しました。

 4月18日からはカバ舎に献花台を設置し、たくさんの方々にお別れに来ていただきました。飼育担当者として、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 サツキとジローは15年間にわたり、仲良くくらしてきましたが、残念ながら2頭の子孫は残せませんでした。カバは群れでくらす動物なので、2頭で飼育することによって精神的にも安定していました。残されたジローが完全に単独飼育になるのは初めてです。サツキの死後、ジローの餌を食べる量が減ったり、プールに長い時間潜ったままでいるなど、やや不安定な状態が見られるため、今後注意深くようすを見ていきたいと考えています。

写真上:豪快に採食中!
写真中:口の中に水をかけてやると喜びました
写真下:2頭で仲良く……(左側がサツキ)

〔上野動物園西園飼育展示係 井上智右〕

(2011年04月29日)



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