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ニホンモモンガの繁殖
 └─2009/07/03

 上野動物園の小獣館では、ニホンモモンガはずっとオス1頭しか飼育していませんでした。しかし昨年(2008年)、富山市ファミリーパークで生まれたメス2頭が来園し、オスと同居させたところ、メス2頭が1頭ずつ赤ちゃんを産みました。

 飼育下のモモンガは屋外なら繁殖が見られるのですが、室内ではなかなか繁殖しません。日本にすむ野生動物の多くは、発情するためには日長の変化と冬の低温が必要だといわれており、室内飼育での繁殖は思ったほど成績がよくありません。

 小獣館では日長を四季にあわせて調整していますが、お客さんがいるスペースと動物がいるスペースを含め、館全体で一つの冷暖房システムしかないため、夏と冬の温度差は5℃ぐらいにしかできず、冬でも15℃ぐらいまでしか下げられません。

 昨年の同居後、餌だけでも季節的な変化をあたえて野生に近づけようと考え、冬場の1日分のえさとして、麻の実、ヒマワリの種、ハト用のえさを合計3グラムほど用意し、これに小指の先ほどのリンゴ、そして葉のついていない冬場のヤナギの枝を与えました。ヤナギの枝は、翌日には樹皮をすべて食いつくすほどでした。フンも、野外でよく見るノウサギやムササビのフンのように、乾燥して色がうすく、繊維をたっぷり含んだものになっていました。

 2009年2月2日、オスの前でメスが尾を上げて受け入れ態勢をとる行動が見られ、交尾も確認できました。ただし、その3日後、オスが同じメスに近づくと激しく追われていました。2月23日には、もう1頭のメスにも追い払われているところを目撃しました。

 メス2頭は2月19日と4月2日以降、それぞれの巣箱から出なくなりました。出産があったと推測されます。巣箱から「チュリチュリチュリ」という小鳥のような鳴き声も聞こえました。上野動物園では、1969年に屋外施設でモモンガ繁殖の記録がありましたが、それ以来の誕生です。

 5月上旬、赤ちゃんが巣箱から出てきましたが、すでに親と区別がつかないほどの大きさに育っていました。ふつうは1頭が2~6頭を産むようですが、出てきた赤ちゃんは母親1頭につき1頭ずつでした。6月15日に子を捕獲して性別を確認したところオスとメスで、体重は118グラムと140グラムでした。

 今回の出産はたまたま成功に結びついた可能性もありますので、今後継続して繁殖するかが大きなポイントです。

写真上:交尾直前の雌雄。上がメス、下がオス
    (2009年02月02日撮影)
写真中:巣から顔を出す親子。上が子ども
写真下:子ども2頭

〔上野動物園西園飼育展示係 細田孝久〕

(2009年07月03日)



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