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キリン赤ちゃん「ユズ」の“その前”“その後”
 └─2008/06/13

 2008年5月23日のニュース(下記リンク参照)でお伝えしたアミメキリンの赤ちゃん「ユズ」の“その後”と“その前”をお伝えします。

・ニュース「アミメキリンの赤ちゃん誕生

 母親のユキにとって今回が初産でした。アミメキリンの初産は4歳前後がふつうなので、7歳4か月だったユキの出産は、かなりの“高齢出産”です。

 また、アミメキリンの初産の約3分の1は流産だったり、生後数日で死亡したりするのですが、ユキの母親「ユウ」が第1仔を産むときも難産でした。しかも、第3仔のユキを産むときは、係員がロープで赤ちゃんを引っぱり出すという一幕も。ユウの出産経験と、その娘であるユキの出産の難易度はあまり関係ないとは思いつつ、これまでのエピソードが頭の隅から離れませんでした。

 心配の種は他にもありました。ユキは出産直前になってもなかなか乳房が張らず、出産後もしばらくは同じ状態だったのです。乳量が足りているのかどうか注意して見ていたところ、母親の四つの乳首をせわしなくさぐるユズのようすからすると、どうやらあまり出がよくないようです。また、母親が授乳を嫌がる行動も観察されました。こうなると、人間が介添えをして赤ちゃんにミルクを飲ませた方がよいのではないかと悩みましたが、ユズ自身はわりと元気だったため、母親を信じて経過を見ることにしました。

 2週間後、ようやく乳量が安定してきたのか、母親に嫌がるそぶりが見られなくなり、ユズも好きなだけおっぱいを飲めるようになったので、私たちも胸をなでおろしました。

 生まれた翌々日の2008年5月8日、ユズを小放飼場へ出しました。見なれない世界を警戒したのか、最初は自分からは出ようとしませんでしたが、30分後、親が出て行くと、ユズも後を追うように出て行きました。

 いったん放飼場に出てしまうと、ユズは持ち前の好奇心を発揮します。一通り通りあたりを見まわしてから、柵越しに観察していた係員に近よったその瞬間!──ふだんおとなしいユキが、前足を左右にパッ開いて立ちはだかり、ユズを制したのには驚きました。しかし、ユキのこの警戒態勢はすぐ崩れ、30分もしないうちに、係員がユズに触れるのを許してしまっているのでした。

 生後約2週間も経つと、ユズは、親の食べるカシの葉や青草、ペレットなどを少しずつ口に入れるようになり、その後も順調に育っています。乳離れはまだまだ先ですが、日中、親と離れて単独で行動することも多くなりました。

 園路に近い小放飼場にいますので、柵に近くで見ることができます。ライオンバスのチケットを買ったとき、ちょっとキリンの放飼場に目を向けてください。美白な顔のユズがそこにいるかも知れません。期間限定の“果実”をぜひご賞味ください!

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕

(2008年06月13日)



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