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イメージとちがう、トナカイのすがた!?
 └─2008/05/23

 トナカイといえば立派な白い角が生えていて、毛がフサフサで……。そんなすがたを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? 2008年5月現在、多摩動物公園のトナカイたちは、そうしたイメージとかけ離れたすがたをしています。想像とずいぶんちがうトナカイを目の前にしたお客さんの反応は、「これは何?」「シカ? ウシ? オオカミ?」など……。すぐトナカイとわかってもらえない理由、それは、角が成長中であり、毛が換毛中だからです。

◎角の成長

 トナカイを含め、シカのなかまは年に一回、角が生え変わります。角があるのは基本的にオスですが、トナカイだけはシカ科で唯一、オスにもメスにも角が生えます。多摩動物公園のトナカイたちは3月の中旬に角が落ちました。これを「落角」(らっかく)といいます。角は根元から落ちた後、今、あたらしい角がぐんぐん成長しています。

 成長中の角は黒っぽく見えます。近くで見ると短い毛がびっしりと生えていてビロードのようです。「角が黒い、しかも毛が生えている!?」──この状態は成長中だからこそ。じつは、毛の生えた皮の下には血管がたくさん通っています。血管から栄養が送られ、角はどんどん伸びていきます。毛は成長中の角を保護するため生えていますが、角が伸びきると皮の下の血管に血液がいかなくなり、黒っぽい皮は剥がれ落ち、白い角が出てきます。トナカイたちは、成長中の角が気になるのか、うしろ足で角をトントンと触ったりしています。

◎毛の生え変わり

 トナカイの冬毛は長く、白っぽい茶色をしていて、びっしりと生えています。それに対して、夏毛は短く、黒色をしています。換毛中の今、対照的な毛が入り混じり、ちょっと皮膚病のよう……。「病気なんですか?」と心配してくださるお客さんもいらっしゃるほどです。最近暖かくなって、園内でも半袖姿の方が増えました。トナカイも人の服装と同じで、冬のすがたから夏のすがたへと変身中なのです。

 角や毛が生えかわるようすを知っていただくために、トナカイ展示場には、月ごとの写真を掲示しています。3月、4月、そして今──どのように変化しているか、見くらべてみると面白いですよ。想像とはちがったすがたのトナカイ──ぜひ実物を見に来てください!!

写真上:落角して、角がなくなった状態
写真中:冬毛
写真下:夏毛

〔多摩動物公園南園飼育展示係 田辺麻里絵〕

(2008年05月23日)



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