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タイリクオオカミの「スイ」来園から1か月
 └─2024/04/26
 今回は3月1日にスイスから多摩動物公園に来園した「スイ」についてご紹介します。

 オオカミはとても警戒心が強く、繊細で賢い動物です。たとえば嫌なできごとに直面し、場所や人間に不信感を抱いてしまうと、その後の飼育管理が難しくなります。そのため、飼育環境と担当者に少しずつ慣らすように努めてきました。

 まずはスイスからの長旅の疲れをとるため、十分な食事と休息を優先しました。最初は床に置いた餌を警戒して腰を引きながら食べていましたが、担当者がトングから与える肉もしだいに食べるようになりました。

 当初は、担当者を見ると唸り声を出して警戒し、室内の階段下に隠れて休息するなど落ち着きがないようすでしたが、1週間ほどで担当者の目の前や藁の上で休息する姿が確認できました。検疫中は室内のみでの生活となりましたが、スイは室内生活に慣れていなかったため、鉄格子を噛む、扉を叩くなどの行動が見られるようになりました。そこで、牛骨などを与えてそうした行動の緩和に努めました。


トングから餌の給餌

 無事に検疫が終わった3月13日、初めて放飼場に出しました。最初は、慣れない環境や観覧者の姿に警戒し、藪の中に隠れることが多く、数日すると腹部から腰にかけて脱毛が見られるようになりました。これは再び直面した新しい環境への適応ストレスが原因と考えられました。

 今では飼育係を見つけると寄ってきて、いっしょに遊ぼうとねだるポーズを取り、さらに気分が高まると駆け回るようすが見られます。また来園から1か月経った4月1日、初めて遠吠えを確認しました。今の環境を自分の縄張りと認識したことが伝わってきて、とてもうれしい出来事でした。脱毛も改善され、新しい毛も生え始め、少しずつ新しい環境に慣れてきています。


スイの遠吠

 今後、日本はスイスの気候と異なる高温多湿の夏を迎えます。引き続き、徐々に環境に適応させていきたいと思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 杉田〕

(2024年04月26日)



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