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チンパンジーの笑顔
 └─ 2024/03/15
 チンパンジーは感情表現が豊かで、喜怒哀楽、すべての表情をストレートに見せてくれます。表情を作ることができる理由は、顔の筋肉が発達しているからです。またコミュニケーションに使われるため、目や口がよく見えるよう顔の毛が少なくなっているといわれています。今回は喜怒哀楽の「喜」のお話をします。

 チンパンジーは群れの中で遊んでいるときに笑うことがあります。これを「プレイ・フェイス(プレイ・パント)」といいます。特に子どもがよく笑いますが、おとなも笑うことがあります。多摩動物公園ではどのようなタイミングで見ることができるでしょうか。

デッキー(オス、推定46歳)

 私たち飼育係は、朝いちばんに「おはよう」と声をかけながらチンパンジーに順番にあいさつをします。健康チェックをおこなったりコミュニケーションをとったりする大切な時間です。ある日の朝、デッキーの部屋の手前まで行くと……これまで私に対して見せたことのない顔のデッキーがいました。


デッキー期待のまなざし

 朝はまず、夜具(夜間、布団代わりにしている麻袋)を返してもらうという作業があります。それまでデッキーと私の関係は、「まずは夜具を返して」と言っても、わざわざ遠いところに置かれてしまい、指示に応じてもらえず、信頼関係があまり築けていないことを実感する日々でした。

 しかし、その日は、デッキーが笑いながら走り、夜具を持ち最初に返してくれたのです。「ありがとう」と言い、しばらく遊びました。以降、あいさつをすると最初に夜具を返してくれるようになったのです。もっと信頼関係を築いていけるように頑張ろうと思えたエピソードでした。


楽しくなったときのさかさまデッキー


ピーチ(メス、母、33歳)、プラム(メス、子、4歳)

 別の日、チンパンジーがいる部屋から、ガハハハハと声が聞こえてきました。そっとと覗いてみると、ピーチ親子の部屋から聞こえるプラムの笑い声でした。母親であるピーチがプラムをくすぐったり、顔をうずめたりして遊んでいます。チンパンジーの子どもは、ほかのチンパンジーと関わるときの力加減などを遊びから学びます。


ピーチとプラムの遊び


ミカン(メス、母、18歳)、ディル(オス、子、1歳)、フブキ(オス、母弟、10歳)

 さらに別の日、フブキがディルを持ち上げて遊んでいたのですが、見ていて心配になるほど揺らしたり引っ張ったりしていました。しかし、隣にいるディルの母親であるミカンが気にしていないことから、大丈夫だと判断し観察していると、ディルがガハッガハッと笑っていました。

 フブキはミカンの弟ですが、あまり信用されていないのか少し前まではディルと遊ぼうとすると早い段階でミカンにディルを回収されあまり遊べていませんでした。フブキはうまく接することができずディルを泣かせてしまうことが多かったからかもしれません。しかし、最近はたっぷり遊んでいる姿も見るようになり、ディルも楽しんでいるようで安心しました。


イブキとディルの笑顔

 今回は、笑いや笑顔について取り上げましたが、ほかの表情についても機会があればご紹介していきます。今後、チンパンジーを見るときにぜひ表情にも注目してみてください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 河本〕

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