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動物園の秘策、飼育係が育てるあるものとは……
 └─2024/03/01
 飼育係の作業はえさやり、掃除、担当動物の観察、繁殖計画などさまざまです。これは何をしているところだと思いますか?


飼育係作業風景

 正解は……


シラカシを食べるスイギュウ(幸吉)


シラカシを食べるアジアゾウ(アマラ)

 動物たちが食べるための枝(葉のついた枝葉)を取っているところでした!

 これはシラカシというブナ科コナラ属の木です。常緑で比較的大きくなり、年間を通して採取できるので、多くの枝葉を確保できます。そのため、多くの動物園で草食動物のえさとして使われています。

 こうした枝葉は繊維が豊富なため、整腸作用もあります。また、あらかじめ細かく切られたえさとは違って、食べるのに時間がかかります。たとえばアジアゾウは野生では一日の大半を食事の時間に費やしているので、枝葉を与えて採食時間を延ばすことは野生の行動に近づけるくふうのひとつにもなります。

 基本的には業者から購入することが多いシラカシの枝葉ですが、多摩動物公園では園内の広いスペースを活かしてシラカシの木を育てています。飼育係が自分で管理をして、担当している動物に合う枝を選んで与えているのです。とくにアジアゾウは膨大な量を食べるので、業者から購入した量だけでは足りず、園で育てたシラカシが活躍します。

 多摩動物公園では2015年に園内でカシ枝を育てる計画が始まりました。樹木なので植えてからえさとして利用できるようになるまで4〜5年かかります。管理方法も草刈りや枝の間引き、雑草の蔓の除去などとても手間がかかります。しかし、自分たちで育てることで餌の費用を節約したり、ほしい量を新鮮な状態で動物たちに与えたりすることができます。また、地震や異常気象などの災害などによって流通経路を遮断されてしまっても、園内で栽培したえさがあれば、ほかのえさと合わせてしばらく持ち堪えることもできます。

 このように園内でのシラカシ栽培はたくさんのメリットがあります。

 じつはご紹介したシラカシ畑は園路から見えるところにあります。園内のさまざまな場所にシラカシ畑があるので、来園の際は探してみてください!

〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 坂上〕

(2024年03月01日)



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