ニュース
アブラコウモリの展示再開
 └─ 2023/10/06
 2021年9月30日に約6年展示していたアブラコウモリの「青」(オス)が死亡してから、約2年の展示休止を経て、2023年9月14日からカワウソ舎・屋内ガラス展示エリアの一角で、アブラコウモリの展示を再開しました。

 青は2015年10月に多摩川で採集された個体のうちの1頭です。今回のコウモリたちも2023年8月に関係省庁の許可を得て多摩川で捕獲されました。じつは2022年10月にもコウモリ採集を試みましたが、夕刻の気温が17℃とアブラコウモリの飛翔条件の一つである20℃を下回っていたことや、一時的な降雨で捕獲網に水滴が付着し、コウモリたちが超音波で網を探知して避けたことも考えられました。

 これらの経験から、今年は8~10月に採集時期を設定しました。8月上旬に採集地の下見をしたところ、捕獲に十分なほどたくさんのアブラコウモリの飛翔が確認できました。そして8月下旬、捕獲網に5頭がかかりました。網周辺への飛来数が多いわりにこの捕獲数は少なめでしたが、強めの風に網が常にたわみ、振動する状態だったためコウモリが察知しやすく、避けていた可能性もあります。

 捕獲した5頭は多摩動物公園の検疫室に搬入しました。捕獲時の体重は6.7~8.2gで、オス4頭とメス1頭でした。オスの腹部尾膜側に大豆ほどの大きさに発達した睾丸が見られました。アブラコウモリは10月に交尾をするとの記録があるため、オスの体内では繁殖への準備がすでに始まっているようでした。

 コウモリたちには、チャイロコメノゴミムシダマシという甲虫の幼虫である生きたミールワームをえさとして与えます。この虫がオーストラリア原産であり初めて食べること。また、野生のアブラコウモリは飛翔しながらチョウ目、ハエ目、カメムシ目など飛ぶ虫を捕まえて食べるため、ふだんの食事方法と違うことから、餌皿に置いたこの幼虫をすぐには食べません。

 まずはミールワームを切ったり潰したりして食べさせ、味を覚えてもらいます。個体によっては、超音波で餌皿の幼虫を見つけられないのか、置いてあるミールワームをなかなか食べてくれません。そこで餌皿の上にコウモリの体が入るくらいの小さな紙箱を用意し、紙箱の上端に後ろ足の爪でぶら下がるとミールワームに届くように設置しました。

 おかげで、餌付け開始から22日目に最後の1頭が自分からミールワームを食べ始めました。


紙箱の内側にぶら下がるようにしながらミールワームを食べるアブラコウモリ

〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 由村〕

◎関連ニュース
野生のコウモリを観察しませんか?(2016年08月05日)

(2023年10月06日)



ページトップへ