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この夏のすごし方──トナカイとエミュー
 └─ 2023/09/22
 この夏は、日本でも世界でも観測史上もっとも暑い夏になり、この記事が掲載されるころもまだまだ暑さが続く予報が出ています。さて、この猛暑をすごしたトナカイとエミューのお話です。

トナカイのすごし方

 トナカイは北極圏やツンドラ地帯に生息する、寒さには強いが、暑さには弱い動物です。野生では地球温暖化の影響などで急速に生息数を減らしており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは現在危急種(VU)に指定されています。

 トナカイは気温が20℃を超えてくると呼吸が荒くなってきます。また、夏季はサシバエにまとわりつかれると振り切るために展示場を走り回ります。暑い中運動してしまうと呼吸が荒くなります。そのため、暑さ対策として6月中旬から9月中旬くらいまで冷房の効いた涼しい部屋と出入りを自由にしています。

 清掃後に部屋の扉が開くとトナカイたちは室内に入ってきて、冷風の吹き出し口の近くで座って休みます。日中はほとんどを部屋ですごし、外から見られなくなるため、来園者へは暑い期間は涼しい部屋で休んでいますとお知らせを出しています。


涼しい部屋で休むトナカイ

 夜間開園時であっても、17時すぎに好きなクヌギの葉を展示場に持っていくと部屋から出てすぐに食べに来たのですが、葉を5分くらいで食べ終わると一目散に部屋に帰っていきました。このときの気温は30℃くらいです。一方、夕方に展示場にシラカシの枝葉を置くと翌朝には葉がきれいに食べられていますので、夜中や早朝の気温が下がる時間帯に部屋から出てきて食べているようです。


エミューのすごし方

 エミューはオーストラリアにすむ、世界で2番目に大きく、飛べない鳥です。オーストラリアの乾燥地域に生息しているので暑さに強い方です。しかし日中30℃以上の暑さになると飲水が盛んになり日陰で休みますが、昼すぎには口を開けて呼吸をするようになります。鳥類は汗をかけないので、体温調節を呼吸でおこないます。


エミューの開口呼吸

 また、エミューは水浴びもします。午後に展示場内にホースで放水すると水流の跳ねているところに行き、その場で座って水浴びを始め、足や腹の部分を冷やします。その後、座ったまま体をひねり、違う部分も水にさらします。このときに退化した翼が見えることがあります。そして体を起こし左右に振って水を飛ばし水気を切ると、再び水浴びをします。20~30分ほど水浴びすると呼吸も落ち着き、立ち上がって羽づくろいを始めます。


エミューの水浴び

 それぞれ、動物自身の工夫と飼育係の取組みで、この夏を乗り切っています。

〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 井上〕

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