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オランウータン「ボルネオ」飛び地へ
 └─ 2023/05/26
 多摩動物公園には、地上約15mの鉄塔9本のあいだに総延長150mのワイヤーロープを張り、ボルネオオランウータンが空中散歩をする施設「スカイウォーク」があります。スカイウォークの先には、多摩丘陵の雑木林を囲った「飛び地」と呼んでいる展示場があり、コナラやクヌギといった自然の木々とさまざまな草が生えています。飛び地では、オランウータンがロープを渡って地面に降りるすがたや、木に登りながら木の葉や新芽を食べるすがたなど、野生に近いオランウータンの行動を見ることができます。

 しかし、オランウータンの性格や健康状態から、スカイウォーク施設のある展示場に出ても、飛び地に渡っていく個体といかない個体がいます。そのなかの1頭が「ボルネオ」(オス)です。


ボルネオオランウータン「ボルネオ」

 ボルネオは、今年38歳になるオスのオランウータンです。飼育係のあいだではやさしい性格(特にメスに)と言われていますが、ときどきイライラして扉を動かし、大きな音を立てます。食べることが大好きで、果物類はもちろん、ほかの個体よりも葉物や野菜もよく食べます。キャベツを豪快に丸かじりする音は、咀嚼音好きな人にはたまらないかもしれません。ボルネオは若くはありませんが、動きが極端に鈍くなるほどの高齢でもありません。しかしボルネオは、屋外に出てもあまり動きません。インドア派で、部屋の中が大好きなのです。展示場に出ても半日まで、それ以上屋外に出ていると、屋内に帰って来るころにはかなり機嫌が悪くなり、扉を動かし大きな音を立てます。


飛び地で葉を食べるボルネオ

 スカイウォーク施設のある展示場へ出ても、ボルネオは1本目の鉄塔に登るだけで、たいてい上部の踊り場からほかの展示場のオランウータンを眺めてすごします。せっかくだから、ロープ渡りをするすがたを来園者に見ていただきたいし、あまり活発には動かないボルネオの運動不足解消のためにも飛び地まで移動してほしいのが飼育係の希望です。そこで不定期に、飼育係がヤシの実を持ち、それをボルネオに見せながら飛び地まで誘導するということをしていました。

 ところが、4〜5月ごろにかぎって、ボルネオは自ら飛び地へ渡り、木に登って新芽や葉を食べます。この時期になると飛び地においしい新芽や葉があることを知っているのです。オランウータンの生息地は雨季と乾季があり、食べられる植物の移り変わりにあわせて、移動しながらくらします。ボルネオは動物園育ちですが、経験から知識を身につけたのだろうと感心しました。


【動画】音量を上げるとわずかに咀嚼音が聞こえます

 でも、正午ごろには「もう帰りたい」と言うように1本目の鉄塔に戻ってきます。

〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 生駒〕

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