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動物園で特定動物を飼育するには
 └─ 2022/12/09
 動物園で動物を飼育したり、輸送したりするためには、さまざまな法律が関わってきます。それぞれの法律ごとに必要な手続きをすることも、動物園の大切な仕事のひとつです。

 そのなかで今回は「特定動物」について紹介したいと思います。この特定動物という言葉をご存知ですか? あまり聞いたことのない言葉だと思います。特定動物とは「動物の愛護及び管理に関する法律」において、「人の生命、身体又は財産に危害を加えるおそれがある動物として飼養、保管が禁止されている動物」のことで、哺乳類、鳥類、爬虫類の約650種が指定されています。種と種のあいだの交雑によって生まれた動物も含みます。

 多摩動物公園では、アジアゾウ、アフリカゾウ、インドサイ、キリン、ライオン、トラ、チーター、サーバル、ユキヒョウ、オオカミ、ツキノワグマ、オランウータン、チンパンジー、シロテテナガザル、ニホンザル、イヌワシ、オオワシ、オジロワシの18種が対象です。

 許可を得るためには、自治体ごとに定めた基準どおりの施設が必要です。動物によって、特性や能力は異なるので、動物種ごとに基準が決められています。しかし、動物園ではお客さまからの動物の見やすさも確保しなければなりません。

 そこで、新しい施設をつくるときには、管轄部署と相談しながら設計します。たとえば、柵や壁のかわりにモート(堀)やガラス窓などがつくられています。素材や構造を変えても基準どおりの安全が保てるように、綿密に検討を重ねます。それでも、完成後に部分的に基準を満たしていない箇所が見つかることもあり、その場合には追加工事が必要になるのでなかなか大変です。

 この基準は2006年に定められたもので、動物園の古い施設では基準に合っていないところもあります。その場合は、使い方を工夫したり、補修をしたりして、安全を確保し使用しています。

 アジアゾウの場合、人止め柵の高さが1.5m以上で動物との距離が6m以上と基準で定められています。新しいアジアゾウ舎でも、一部お客さまからは見にくいところもあるのですが、法律の基準を満たし、来園者のみなさまの安全を守るための構造です。アジアゾウ舎の屋上には、柵が低めで見やすくなっているところもありますので、ぜひそちらからもご覧ください。


屋上から見たアジアゾウ

 もうひとつ、アジアゾウ舎の前に輸送箱が置いてあるのをご存じですか? 特定動物の場合には、輸送箱についても許可が必要です。施設ほどの細かい基準はないのですが、動物に壊されずに、安全に輸送できることが条件です。この輸送箱は園内の移動に使用したものですが、アジアゾウにも壊されない、とても頑丈な箱です。近くで見ることができますので、アジアゾウ舎に行かれた際には、ぜひご覧ください。


アジアゾウの輸送箱

〔多摩動物公園調整係 清野〕

(2022年12月09日)



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