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アフリカゾウ「砥夢」への挑戦[その2]
 └─ 2022/11/11
 多摩動物公園で飼育するアフリカゾウが「砥夢トム」1頭となり半年以上がすぎました。前回の記事では砥夢の問題行動を減らすための飼育係の取組みをお伝えしましたが、砥夢への挑戦はまだほかにもあります。今回は続編として、砥夢の新しい移動ルートの開拓についてお伝えします。

 アフリカゾウ舎にはさまざまな扉や仕切りがあり、室内と運動場間の移動だけでも何通りもの道筋があります。使用できる道筋が多いほど移動の選択肢は増え、移動のたびにランダムなルート設定ができるようになります。それは砥夢にとって考える力をきたえることにつながります。

 この春から、使用していなかった新たなルートを通れるよう取組みを進め、以前は一方通行だった選択肢が大幅に増加しました。以下に、これまでの取組みから2つの例を紹介しましょう。

 ひとつめは、屋内の寝室からスクイズケージを通過して運動場に出るルートです。スクイズケージは油圧操作で横幅が狭まる仕組みになっており、ゾウを物理的に保定することができます。今回の試みのなかで、砥夢はこのルートに対して特に警戒心が強く、始めは寝室の柵を開けても出ることさえためらっていました。そのため、段階を踏んで少しずつ馴らしてみたり、運動場から室内に戻る逆バージョンで通過できないか試みてみたりしました。

 その結果、約1ヵ月後にこのルートを躊躇ちゅうちょなく通れるようになり、さらには飼育係の指示のもと、ケージ内にしばらく留まることもできるようになりました。留まる時間を増やしていくことで、今後の健康管理においてできることの幅が広がります。現在は週1回のペースでこのルートを用いて運動場に出ており、そのたびに体重測定もおこなっています。

寝室から第2運動場に出るルート。
スクイズゲージを通過して第1運動場にも出られる
運動場から部屋に戻る逆バージョンに挑戦。
中のようすを確認中……

 ふたつめは、第1運動場と第2運動場間をつなぐルートです。このルートは過去に試したことがありましたが、そのときは警戒して通ることができませんでした。今回もそう簡単にはいかないと思いましたが、なんと一発で通過できたのです。

 これは、このルートを試すまでにさまざまなルートに挑戦させるなどいままでと違う体験を提供し続けたことにより、新しいことに対して自ら行動できるようになったためではないかと考えています。

 現在は、午前は第2運動場ですごしてから、このルートを通って第1運動場に移動し、午後はそちらですごすことが多いです。飼育係は砥夢がひとつの運動場にいるあいだにもう片方にえさを設置できるので、1日を通してより広い範囲でえさを探索させることができます。

第2運動場から第1運動場に移動するルート。
これまでは一度寝室に戻ってから第1運動場に出ていた
慎重にゆっくり通過。
目の前には好物のカシの枝が……

 新しい取組みへの挑戦によって砥夢の考える力が活性化され、柵を揺する、牙を壁に擦りつけるといった問題行動は減りつつあり、代わりに運動場内を広く使って進んでえさを探索するようすが見られるようになりました。

 今後も砥夢のよりよい生活のため飼育係全員で奮闘いたしますので、どうぞあたたかく見守っていただけるようお願いいたします。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 山本〕

(2022年11月11日)



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