ニュース
展示場に出たがらないライオン
 └─ 2022/10/07
 昨年7月に富士自然動物公園(富士サファリパーク)から来園したオスライオン2頭のうち1頭を、今年の5月から群れの一員として展示しています。今回は、展示していないもう1頭のようすをお伝えしようと思います。

 なぜ2頭で展示しないのか。その理由は、外に出たがらないからです。「オスライオン2頭を群れに入れて展示したい」というのが担当者の考えですが、現在展示していないオスは展示場に出たがらず、たいへん苦戦しています。

 オス2頭の屋外展示場への放飼練習を始めたのは、昨年末でした。富士自然動物公園にいたときも屋外に出ていなかったため、初めての外になります。そのため、興味を持って展示場内に出ても、少し探索したらすぐに戻ってくるのではないかと想像していました。

 1頭は、想像どおりすぐに展示場へ出てしばらく探索していましたが、もう1頭は、一歩も外に出ずに放飼練習が終わりました。このオスライオンは、来園の際も輸送箱へなかなか入らず到着が遅れ、到着時も寝室へ入るのに時間がかかったこともあり、そのときの記憶がよみがえりました。


2022年2月ごろのようす。頑なに外に出ないオスライオン(写真右の個体)

 その後も、新型コロナウィルスによる臨時休園期間中は毎日オス2頭で放飼練習をしていましたが、一向に外に出る気配がありません。まるで見えない扉があるようでした。

 進展が見られないため、入口から展示場に向かってぽつぽつと肉を置いて誘導してみたり、その距離を長くしてみたり、休園中のみの試みとしてサファリ橋の上から展示場に肉を投げてみたり(まねはしないでくださいね)といろいろ試してみました。躊躇しながらも肉は食べに行きますが、食べ終わるとすぐに中に戻ってしまいました。そこで、思い切って外で肉を食べている最中に展示場のシャッターを閉めてようすを見てみたのですが、軽いパニックを起こしてしまい、よけいに外をこわがってしまう結果になりました。それからは、無理に誘導せず、展示場のシャッターを開けて自由に出入りできるようにしています。

 7月からは1ヵ月ほど、朝の30分だけ屋外につながる小放飼場のシャッターを格子のみにして、開園中の展示場や群れのようすを中から見られるようにしました。最初はライオンバスに驚いたり、他個体にビクビクしたようすもありましたが、しばらくするとシャッターのすぐそばで外のようすを見るようになり、外への興味が持続していることは確認できました。この個体には、十分に時間をかけて練習していく必要がありそうです。

 現在も、休園日にはオス2頭の放飼練習を継続しています。ほんの少しずつですが、体の一部が外に出てきている状態です。いつか展示場に出てくれることを信じて、引き続き放飼練習をしていきたいと思います。


2022年9月のようす。ほんの少しだけ外に出ています

〔多摩動物公園北園飼育展示係 苅部〕

◎関連ニュース
ライオンのオスの交代と新オスの変化(2022年6月24日)

(2022年10月07日)



ページトップへ