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インドサイのトレーニング
 └─ 2022/08/05
 多摩動物公園では現在、3頭のインドサイを飼育しています。そのうちメスの「ゴポン」は今年の4月から、いままでの馴致作業に加えて、新たなトレーニングを始めています。今回はその内容についてご紹介します。


「ゴポン」がトレーニングをおこなっているようす

 上の写真は「ターゲットトレーニング」のようすです。ターゲットトレーニングとは簡潔に言うと、ターゲット(目標物)に、動物が自ら体の一部をつけるトレーニングのことです。これにより動物は飼育係の指示で移動・待機する、手や足を差し出すなどをすることができ、動物園では健康管理を目的のひとつにおこなわれています。

 ゴポンの場合、飼育係が持っている先端が黄色の「ターゲット棒」を用いておこないます。ゴポンは飼育係の「はな」という号令とともに、寝室の柵越しに差し出されたターゲット棒の先端に鼻先をつける練習をしています。これを繰り返すことで、ゴポンを寝室の中で来てほしい位置に誘導することをめざしています。

 ゴポンは秋から夏前にかけて尻周辺の皮膚のただれが強く、患部を水で洗って清潔に保ったり、薬を塗ったりしています。多摩動物公園では安全管理上、飼育係が柵内に手を入れるなどしてサイと接触することを禁じています。そのため以前はえさなどを用いることで寝室の柵側にサイを寄せて治療をおこなってきました。今年度からは、ターゲット棒を用いてゴポンを寝室内の治療しやすい位置に誘導することで、動物と飼育係双方の安全を確保しながら、よりスムーズに治療作業などをおこなうことができるようになってきました。

 また、「はな」の号令によるターゲットトレーニングを応用し、尻以外の部位の管理にも役立てるための取組みをおこなっています。現在は、インドサイにとって重要な蹄や足裏の管理のためにゴポンが寝室の柵側にぴったりと体を寄せたり、足裏を人側へ向けて横になる姿勢をとったりすることをめざしています。

 さらに、ゴポンだけでなくオスの「ビクラム」の左前肢の蹄や足裏の治療にもターゲットトレーニングを導入し始めています。将来的にはオスの「ター」でもターゲットトレーニングをおこなうことを視野に入れています。


「ビクラム」の足裏の治療のようす

 日常的な健康管理をおこなって動物の身体の異状を早期に発見、対処することは、とても大切なことです。これからもトレーニングに取り組み、インドサイを安全に健康に保ち飼育できるように努めていきます。

〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 横濱〕

(2022年08月05日)



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