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オランウータン「チェリア」の成長。そして、独り立ちへ
 └─ 2022/07/01
 多摩動物公園で飼育しているボルネオオランウータン「チェリア」(メス、8歳)のこれまでの成長と最近の変化についてご紹介します。


成長した「チェリア」

 チェリアは、2014年11月19日によこはま動物園ズーラシアで生まれました。しかし、母親がうまく子育てをすることができなかったため、飼育係が親代わりとなる人工哺育で育てられました。人工哺育では、すくすくと順調な成長が見られる一方で、オランウータンとして生きていくための学習機会を与えることが大きな課題となりました。

 オランウータンは、大型類人猿のなかでも特に子育て期間が長く、このあいだに母親から生きる術や子育ての仕方を学びます。こうした学習は、飼育係が母親代わりになって教えられるものではありません。そこで白羽の矢が立ったのが、多摩動物公園の「ジュリー」(メス、当時51歳、現在57歳)でした。子ども好きのジュリーにチェリアの代理母になってもらうことで、チェリアの学習機会をつくろうと考えたのです。

 そして、誕生から2年が経過した2016年12月25日、チェリアが多摩動物公園にやってきました。来園初日に柵越しに会わせたところ、2頭の関係はとても良好で、ジュリーはチェリアをすぐに受け入れ、人工哺育で育ったチェリアと代理母ジュリーとの親子関係が始まりました。この代理母の取組みは、国内では初めての成功例となりました。


少し離れた所からチェリアのようすを気にする「ジュリー」

 代理母となったジュリーは、常にチェリアを目の届くところに置き、献身的な子育てを見せてくれました。2頭の関係に変化が見られたのは、2022年1月末のことです。ふだんであれば、チェリアを背に乗せて寝室から出てくるはずのジュリーが、チェリアを寝室に置いて、放飼場へと出て行ってしまいました。少し慌てるチェリアに対して、ジュリーは落ち着いたようすで、その反応をうかがっていました。3月下旬にはチェリアの初潮を確認し、身体の変化とともに独り立ちの時期も近づいてきたようです。

 これまでは、自身が好まない場所にチェリアが行こうとすると、手や足を引っ張ってチェリアを引き止めていたジュリーですが、こうしたチェリアに対する関心が薄くなったことで、2022年4月11日にチェリアが初めてスカイウォークに出るところを確認しました。しかし、チェリアは他の個体に促されはするものの第1タワーの最上部で不安げに鳴くだけで、それ以上先へは進めません。チェリアが悠々とスカイウォークを渡っていく姿を見られるようになるには、まだまだ時間が必要なようです。

 このように2頭の関係は少しずつですが着実に変化してきています。ジュリーから多くのことを学び、独り立ちをしたチェリアが、将来立派な母親となれるよう、今後も取組みを進めていきたいと思います。


何かに興味津々の「チェリア」。他個体との関わりからも日々多くのことを学んでいます

〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 山本〕

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