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意外に知られていない? 放飼場へのライオンの出し入れ作業
 └─ 2022/04/15
 多摩動物公園では現在14頭のライオンを飼育しています。ふだん、みなさんがライオンバスから見ているライオンの群れのメンバーは9頭おり、そのなかから日替わりで6頭前後が放飼場で展示されます。

 ライオンは朝放飼場に出て、夕方獣舎に帰宅し、朝が来るまで獣舎内の寝室ですごします。今回はその獣舎内でライオンをどのように移動させ、出入舎させているのかをご紹介します。

 サファリ橋から見えるライオン舎内は、写真のように真ん中に飼育係が移動するための通路があり、その両脇にライオンの部屋が10室並んでいます。ひとつの部屋はライオンが5頭前後入れるくらいの大きさです。通路の足元、縦格子の下には、シュートと呼ばれる動物専用の通路があり、放飼場へつながっています。途中を仕切り扉(落とし扉)で区切ることができます。


ライオン舎内の通路

 群れの9頭は、オス2頭が1部屋、メス7頭が2部屋に分かれてすごしています。このメスの部屋には、展示していない高齢のメス1頭も同居しています。

 毎朝、各部屋からその日放飼場に出すライオンだけを、放飼場に出す順番に並ぶよう、仕切り扉で区切ったシュート内の区画に出していきます。しかし、ライオンはその日、自分が放飼場に出る予定なのかわかるはずもなく、また自分自身の名前も自覚していないので、飼育係に名前を呼ばれて出てきてくれるわけでもありません。

 では、どのようにしているかというと、部屋の中をわらわらと動き回っているライオンのなかから、放飼場に出したいライオンがシュート扉の前に来たタイミングで扉を開けて、シュートに出します。夕方、最終バス後にライオンが放飼場から獣舎に帰ってくるときは、朝出て行った扉からシュート内に入れ、その内部の仕切り扉を開け閉めして、それぞれが夜過ごす部屋まで、1頭1頭を誘導して収容しています。簡単そうですが、瞬時に個体を識別し、また個体の性質を把握していないとできない作業です。


ライオンの出入口

 文章にするとなかなか緊張感が伝わらないかもしれませんが、当園のライオンは群れで飼育管理しており、人に慣らすようなことはしていません。したがって、飼育係の思いどおりにライオンはなかなか動きません。また、ライオンも群れのなかまとはいえ、個体どうしのあいだには仲がよくない組み合わせもあります。狭い場所に密集する出入舎作業はライオンどうしのトラブルが発生しやすく、飼育係にとって、とても緊張感がともなう作業です。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 八坂〕

(2022年04月15日)



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