ニュース
ハチクマのためならば……
 └─ 2021/10/08
 ハチの幼虫やさなぎを好んで食べるタカとして最近注目されている「ハチクマ」ですが、当園の猛禽保護ケージで見ることができます。


ハチクマ

 ハチクマは4~5月ごろに東南アジアから日本に飛来し、9~10月に越冬のため東南アジアに戻っていく夏鳥です。日本の夏の里山を代表する生き物として知られている鳥ですが、近年羽数を減らし、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種(生息条件によっては絶滅危惧に移行する可能性のある種)に認定されています。また、国内の動物園でも、当園を含めて2園しか飼育されていません。

 野生のハチクマは、ハチだけを食べているのではなく、ハチが営巣する6~9月以外はカエルやヘビ、鳥のひななどを食べていますが、動物園ではハチやカエルなどどれも定期的に与えることができないため、その代用品としてドッグフード(ウェットタイプ)と馬肉を与えています。

 代用品でも体調の不具合はありませんが、偶然採取できたハチの幼虫やさなぎを与えると、他のえさより好んで食べており、フンの状態なども良好なため、ハチを与える必要性を感じました。今までは偶発的に採取した巣を与えていましたが、今年の夏は園内のハチに関する情報を収集し、スズメバチやアシナガバチの巣を発見した場合、可能な限り巣を採取しました。

 通常、スズメバチなどの巣を駆除する場合は殺虫剤を使用しますが、えさとして与えるため使用することはできません。自身と周囲の安全を確保するため、作業は主に休園日におこない、防護服を着用して、7m以上の長い釣り竿の先端に網を装着したもので巣ごと取ります。

 ハチに刺されてはと、初めは恐る恐るの採取でしたが、今では短時間で効率よく採取できるようになり、幸いにも、一度も刺されることなくスズメバチやアシナガバチの巣を約7kg採取することができました。

 今回は、駆除ではなく、幼虫やさなぎをできるだけ無傷で採取する様子を動画でご紹介します。


【動画】ハチクマのためにハチ捕り

〔多摩動物公園南園飼育展示係 川鍋〕

(2021年10月08日)



ページトップへ