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サル山メンバー紹介──「メゾン」(メス)の話
 └─ 2021/06/10
 ニホンザルの「メゾン」は、1988年4月10日に多摩動物公園で生まれ、今年で33歳になりました。2020年6月の記事で紹介したサル山最高齢である「ミドリ」(メス)の1歳年下になります。血縁には、娘の「アイ」(16歳)、息子の「センリョウ」(14歳)、孫娘の「メンタイコ」(4歳)がいます。


ニホンザル「メゾン」
(撮影日:2021年05月16日)

 2020年7月17日、両眼にたくさんの目ヤニがたまり、元気をなくしていたメゾンを確認しました。すぐに群れから分けて園内の動物病院でおこなった検査の結果、右眼は水晶体などに濁り、左眼は角膜に炎症などがみられました。その日は目ヤニをきれいに洗って眼軟膏を塗り、細菌の感染を抑えるために抗生剤を注射してもらいました。体重は10.2kgでした。その後、入院して治療を続けた結果、7月23日からは目ヤニが見られなくなったため、翌24日に退院し、サル山の仲間たちといっしょになりました。

 2020年12月4日には、メゾンは他の個体に咬まれたのか、右脇腹から出血しており、飼育係9名でメゾンを室内へゆっくりと追い込み、治療のため動物病院へ運びました。傷口が5cmほど開いていたため獣医師に縫合してもらいました。体重は8kgと約5か月前に比べて2.2kg減っていました。手術が終わって麻酔からさめた後、その日のうちに群れへ戻しました。

 2021年3月8日、メゾンはサル山でうずくまって動けなくなっていました。室内へ隔離後、獣医師から抗生剤と脱水を防ぐための生理食塩水などを注射してもらいました。11日の検査では、昨年7月に比べて左眼の硝子体が縮んでほとんど見えず、右眼も光は感じるがあまり見えていないだろうと診断されました。体重は7.35kgとさらに痩せていましたが、食欲も回復したため、3月14日に群れへ戻しました。

 その後、5月初旬までは群れの仲間たちの声や気配でえさの時間を感じとり、壁際や側溝にそってえさ場まで自力で移動して、毎回えさを食べにきていました。それが、5月14日にはえさを食べにこなかったため、メゾンのそばまで近寄り、ペレット・オレンジ・煮イモなどを体に当たるように軽く投げてやると、えさを手で探り当てて食べていました。最近まで、この状態は続いています。

 いつも、強いオスの「スエズ」や「ナマコ」、息子のセンリョウが私たち飼育係の行動を見張っており、不用意にメゾンに近づくと、すぐにこちらを威嚇してきます。するとメゾンは仲間の声を聞き、頭を上げてあたりのようすをうかがいます。これからも、彼らのきずなを尊重して、できる限りメゾンが群れで生活を送れるようサポートしていくつもりです。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 由村〕

(2021年06月10日)



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