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丸くなる、愛らしい生きものといえば……
 └─2021/03/06
 黒っぽくて、お豆を半分にしたような形で、敵に襲われると丸まって身を守る……そう、みなさんよくご存知のゴキブリですね。

 え? それはダンゴムシ? いえいえ、そんなダンゴムシのようなゴキブリもいるんです。

 その名はヒメマルゴキブリ。おもに沖縄に生息しています。昨年(2020年)12月に多摩動物公園昆虫生態園にデビューしました。写真1をご覧ください。「南西諸島のいきもの」コーナーにデビューしたヒメマルゴキブリです。

写真1:ヒメマルゴキブリ
写真2:アクリル板ごしに
6本の脚が見える
写真3:正面から見たところ。
触角が長い

 指でつつくと丸くなる姿は本当にダンゴムシそのものですが、よく観察すれば違いが見えてきます。腹側からよく見ると(写真2)、足は6本。これは昆虫の特徴です。昆虫ではないダンゴムシは、足がたくさん生えています。また触角はゴキブリとしては短いほうですが、ダンゴムシにはない長さです(写真3)。

 そしてもう一つの違いは「脱皮」。ダンゴムシは体の前後で半分ずつ脱皮しますが、ヒメマルゴキブリは背側から一気に殻を脱ぎます。あまりにきれいに残っているので、死体かと勘違いしてしまうほどです(写真4)。

 しかしこの姿で一生を過ごすのはメスだけ。幼虫はオスもメスもダンゴムシ体型なのですが、成虫のオスはおなじみのゴキブリの姿をしていて、翅があり飛ぶこともできます。また、全力疾走でもたどたどしさを感じるメスと異なり、オスは素早く動きます(写真5)。

写真4:脱皮殻。よく見ると背に切れ込みが見える
写真5:ヒメマルゴキブリのオス成虫

 ダンゴムシのような見た目、丸くなって身を守る生態、お世辞にも素早いとは言えない足取り、そして華麗な脱皮……その愛らしさは、ゴキブリが苦手な方にも伝わるのではないでしょうか?(オスはちょっと……という方もいらっしゃるかもしれませんが)

 衛生害虫として嫌われがちな存在ですが、森にくらすゴキブリは落ち葉などを食べて森の土として返す大切な役割を果たしています。そんなゴキブリを身近に感じるきっかけになってくれればと思っています。昆虫生態園ではダンゴムシも展示しています。違いを観察するのもおすすめです。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川〕

(2021年03月07日)


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