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カイコのお話[その2]:飼育と繁殖
 └─2021/01/15
 前回の記事(2021年1月8日掲載)で、カイコの魅力についてお伝えしました。自分でも飼育してみたい!という方がいらっしゃるかもしれないので、今回はカイコの飼育と繁殖についてご紹介します。


カイコの繭の色は白だけではありません

 カイコ=白い繭というイメージがあるかもしれませんが、品種によってさまざまで、黄色やオレンジ色などもあります。幼虫の体も白いものから縞々模様などいろいろです。これらの品種は、遺伝資源を保存する国家プロジェクトとして九州大学などで維持され、利用者に有償で提供されています(参考:ナショナルバイオリソースプロジェクト[NBRP]カイコデータベース)。ほかにも、幼虫やえさ、ケースなどが1つになった飼育セットを販売しているサイトもあります。自分好みのものを探してみてください。

 カイコは室温25℃前後の部屋で飼育します。飼育ケースはプラケースでも紙箱でもよいのですが、湿度が70%程度に調整できるよう、蓋に新聞紙を挟むなどくふうをします。蒸れすぎや乾燥のしすぎに注意しましょう。えさはクワの葉か人工飼料を与えます。5~10月なら野外にクワの葉が生えているのでそれを利用できますが、農薬などがついていないことの確認と、クワの持ち主に葉を採る許可を得ることはお忘れなく。

 孵化間もないカイコはとても小さくつぶれやすいため、小筆などでえさに移します。成長するにつれ食欲が増すので、えさがなくならないよう注意しましょう。4回脱皮して5令幼虫になったら、その後1週間もすれば繭を作り始めます。頭を上にあげ、顔を左右に振ってウロウロしたり、上に登ろうとするようすが見られたら繭を作らせます。ふだんはあまり動かないカイコですが、この時期だけは繭を作る場所を探して逃げてしまうことがあるので注意します。トイレットペーパーの芯などを入れておくと、その隙間に繭を作ります。

 ふつうは1頭につき1つの繭を作りますが、まれに複数の個体が同じ繭の中に入り、特大サイズの繭ができあがることがあります。これは「玉繭」と呼ばれ、糸を採るのではなく真綿にするのに利用されます。

光に透かして見た玉繭
玉繭とふつうの繭(右)

 繭から糸を採りたい場合は、繭を冷凍、もしくは乾燥させて中の蛹を殺してしまいます。そうしないと、中で羽化したカイコが繭を突き破ってしまうのです。

 繁殖させたい場合は羽化させましょう。羽化直後から交尾をし、一度交尾を始めると半日以上やめずに延々と続けてしまうことがあるので、その場合は人がオスとメスの体を軽くねじって分離します。このことを「割愛」といい、そこから「惜しいものを思い切って省く」という言葉が生まれたと言われることもあります。


【動画】頃合いをみて交尾を切り上げる「割愛」。まっすぐ引っ張ると取れ
にくいので、オスの体(向かって右の個体)を少しひねって離します


 なお、成虫は口が退化しており、1週間ほどの命です。メスは数百個の卵を産み、産卵後2〜3日で色がついた卵は冬を越してから孵化します。1週間くらいしてから色づいた卵は10日ほどすると孵化します。

 カイコについてはまだお伝えしたいことがありますが、紙面の都合上「割愛」させていただきます。これを機にカイコについて興味をもっていただけたら嬉しく思います。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 佐々木〕

(2021年01月15日)


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