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グローワームの近況──今年もたくさんの幼虫が孵化しました
 └─2020/10/23
 現在、多摩動物公園の昆虫園は公開中ですが、その中で1か所だけ展示を休止しているのが、昆虫園本館の「グローワームの洞窟」です。


展示室内で営巣するグローワームたち

 グローワームとは、オーストラリアとニュージーランドの鍾乳洞や洞窟に生息するヒカリキノコバエの幼虫です。えさとなる昆虫を自分の巣におびき寄せるために、尾端を青く発光させます。その青い光を来園者の方に見ていただくため、展示室内は暗く、閉鎖された空間になっています。観覧する際に「密」が避けにくいため展示を休止しているのですが、裏側では500匹以上の幼虫を飼育しています。

 今年(2020年)の4月から9月末までに96匹(オス44匹、メス52匹)が成虫となり、繁殖のために雌雄をいっしょにして交尾させた結果、約350匹の幼虫が孵化しました。メスの成虫の寿命が3日程度と短く、オスとメスの羽化のタイミングを合わせるのが難しいことを考えると、今年の繁殖は順調に進んだと言えるでしょう。孵化したばかりの幼虫は体長約3mm、とても小さく繊細です。


グローワームの巣と幼虫。幼虫の尾端(向かって左側)が発光器

 展示室内で幼虫たちが営巣しているのは、観覧窓近くに設置した保水性のあるオアシス(吸水スポンジ)です。写真のように、オアシスの窪みに1匹ずつ巣を作って発光しています。幼虫が口から吐く粘液で作られた巣が並んでいる光景は、まるでマンションか団地のようです。この巣の一つ一つに、ショウジョウバエやコオロギの幼虫など、えさとなる小さな昆虫を飼育係がピンセットで付けていきます。


羽化途中のメス。腹腔内に黄色い卵が見える

 半年から1年弱かけて成虫になるまで、根気のいる飼育作業が続きます。いつか再びグローワームの美しい発光を皆さんに見ていただく日まで、大切に育てていきます。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 吉川道子〕

(2020年10月23日)



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