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「砥夢」の体重測定とゾウにも人にも安全なPCウォール
 └─2020/09/18

 2020年8月15日、アフリカゾウの“砥夢”(トム:オス、11歳)の体重測定をおこないました。砥夢の体重測定は今年で6回目です。

 去年までは体重計にスムーズに移動していた砥夢ですが、今年は違いました。測定作業を始めると、警戒して体重計の手前で引き返してしまい、部屋からこちらをうかがっていました。そこで、警戒心を和らげるために、リンゴやオレンジなど、ふだん与えているえさを地面に置いて、ふたたび実施。それでも砥夢はえさを拾うとすぐに戻ってしまいます。

 しかし回数を重ねると砥夢の警戒心も薄れ、開始後40分ほどでようやく体重計に乗りました。4回計測した平均値は3,995kgでした。去年の3,550kgと比較すると、405kgの増加です。アフリカゾウはおとなになるまでに1日約1kg増加するといわれているので、砥夢の成長がとても順調ということがよくわかります。


体重測定のようす

 みなさんが多摩動物公園のアフリカゾウを見に来たとき、向かって左側の運動場にあるピンク色の柵は何だろう?と疑問に思ったことはありませんか? PCウォール(Protected Contact Wall)と呼ばれるこの柵は、飼育係が安全に治療やトレーニングをするための設備です。人とアフリカゾウを仕切るためだけではありません。足や耳を出すことができる枠があり、ひづめの手入れや耳裏から採血などもおこなうことができます。

 砥夢の牙の治療も毎日このPCウォールを介しておこなっています。しかし、何もせず素直にゾウが足や耳を出してくれるわけではなく、日頃からのトレーニングが必要です。たとえば、足を水で洗った後、たわしでひづめの汚れを取り除くという決まった手順を踏んでいます。耳は手で触り、傷などがないか確認をします。このようなトレーニングを日々おこなうことによって、必要なときにすぐ処置をすることができるのです。

足の消毒
耳の状態を確認
砥夢の牙を治療中

 トレーニングや治療はアフリカゾウ舎に近い展望台からじっくり観察することができますが、一つお願いがあります。PCウォールにゾウが来ているとき、突然大きな音や声をゾウが耳にすると驚いてしまうため、お静かにお願いします。治療中は飼育係とゾウとの距離がとても近くなるため、ゾウが驚いて急に動いてしまうと、人間のケガにつながる恐れもあります。展望台からゾウを観察するときは、どうぞそっと、暖かく見守ってくださいますよう、お願いいたします。

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〔多摩動物公園北園飼育展示係 山本悠太〕

(2020年09月18日)


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