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62回目の開園記念日にあたって
 └─2020/05/01

 現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威は世界を覆い、日本もまた日々困難な、予断を許さない状況にあり、一日も早い終息が望まれます。

 多摩動物公園は2020年3月28日から、新型コロナウイルス感染症拡大防止の取り組みとして臨時休園となりました。現在、国の緊急事態宣言が発令されており、多摩動物公園は1958年5月5日に開園して以来初めて、来園者のいない「開園記念日」を迎えます。子どもたちの姿がない動物園は本当に寂しく、早く多くの方々が訪れることができるようになればと願っています。


 動物の管理は、臨時休園期間中も基本的に変わりませんが、新型コロナウイルスによる感染者が出ると作業の継続が困難となる可能性があります。現在も職員ひとり一人の健康状態を把握し、勤務体制の変更などにより感染リスクを減らし、発生に備えた方法の見直しをおこなっています。

 4月上旬には米国のブロンクス動物園でライオンなどのネコ科動物が、無症状感染の飼育担当者から感染しています。研究によればさまざまな種の動物に感染するリスクがあるため、安定した飼育管理を目指しています。

 また、新型コロナウイルス感染症の蔓延は経済活動に多大な影響を与え、国内外の動物園等で運営に支障が出ている施設もあるようです。このことは最終的に、野生動物保全への影響につながります。国内外の関係者との連携をさらに進め、野生動物の保全にもしっかりと取り組んでいくつもりです。

 さて、閉園期間中には動物の姿をSNSなどで発信し、「癒しとなった」「動物園の再開を楽しみにしている」との声や、飼育担当者への労いの言葉などもいただきました。応援してくださる方々にあらためてお礼申し上げるとともに、開園に向けてしっかりと準備していきたいと思います。

 昨年度は、開園中に飼育担当者が死亡する事故が発生し、多くの方々にご心配をおかけしました。園としては同様の事故を防止するため、作業の危険性についてあらゆる可能性を想定し、作業手順の改善などに取り組んでいます。今年度は新しいアジアゾウ舎のオープンやライオン展示とライオンバス運行の再開が予定されており、安全安心の取り組みをしっかりと進めていきます。

 最後になりますが、今回の事態を通じて、元・上野動物園長の古賀忠道氏の「動物園は平和なり」という言葉があらためて思い出されました。動物園が安心して訪問できる場所となり、展示動物や植物、自然環境などを通じて、家族の団欒、文化・科学的な興味を深める場となることを願ってやみません。

〔多摩動物公園長 渡部浩文〕

(2020年05月01日)


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