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クロツラヘラサギ、集団営巣中!
 └─2020/04/24

 厳しい寒さの冬が終わり、待ち遠しかった春がやってきました。臨時休園中の多摩動物公園ですが、動物たちにも春が訪れています。私の担当する鳥類も春を迎え、繁殖期に入りました。

 ウォークインバードケージの中にはクロツラヘラサギという鳥がいます。名前のとおり、顔のまわりが黒く、「へら」のようなくちばしをもつ特徴的な鳥です。

 このクロツラヘラサギも繁殖シーズンを迎えました。このご時世ですが、クロツラヘラサギは集団を作って繁殖します(ヒトのみなさんは「密」を避けてお過ごしのことと思います)。集団といっても相手が決まっていないわけではなく、いくつかのペアが巣を作り、巣と巣が隣り合っている状態です。

 ウォークインバードケージでは昨年、クロツラヘラサギ用の縦150×横150×高さ110センチの巣台を3つ設置しました。以前はトベラという木の上にプラスティック製のネットを広げ、その上で繁殖させるようにしていたのですが、植物が消耗してなくなってしまったため、新しく巣台を作ったのです。



 3つの巣台を別々の場所に置き、クロツラヘラサギが好きな場所を選んでもらうようにしたところ、以前に使っていた場所の近くに置いた巣台を使い始めました。ここがよぽど気に入ったようで、昨年と今年、2年連続で使っています。先に書いたとおり集団で繁殖する習性があるので、巣台の上は巣がびっしりと並び、狭そうなのに他の巣台に移ることはありません。巣と巣の間が近いので、ときには隣の巣の巣材(枝や草)を取ってしまい、ご近所トラブルになることもありますが、へらのようなくちばしは角がなく、突いても大事にはいたりません。

 くちばしの攻撃力が低いせいか、威嚇するときは上下のくちばしを強く打ち合せ、カスタネットのようにして音を鳴らします。こうやってクロツラヘラサギのペアは自分たちの卵と巣を守り、自分たちの子孫を残そうと一生懸命です。

 臨時休園をしていますので、みなさんにはこの姿を実際に見ていただくことができず、大変心苦しいのですが、このニュースを通じて自宅でも多摩動物公園にいるクロツラヘラサギに思いを馳せてみてください。そして、繁殖シーズンの彼ら彼女らを応援してください。動物たちにとっては日常のなかのシーズンではありますが、懸命に生きる動物とともに、この危機をいっしょに乗り越えていきましょう。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 田口陽介〕

(2020年04月24日)


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