ニュース
あなたは誰? ヤマアカガエルの個体識別
 └─2020/01/24

 下の写真はヤマアカガエルです。1匹1匹を見分けることができるでしょうか。恥ずかしながら、私はできませんでした。そう、つい先日までは……。そこでカエルを見分けられるようになった舞台裏をご紹介します。


背中の模様は1匹ずつ異なる

 多摩動物公園では東京都に生息する両生類の保全活動として、2012年からヤマアカガエルの飼育下繁殖に取り組んでいます。動物園のかぎられたスペースで飼育するには寿命を把握する必要があるため、生まれた年ごとに水槽を分けて飼育していました。

 ところが予想以上に長生きし、8歳の個体が健在です。このままでは水槽の数が増え、新たなカエルを飼育するスペースが足りなくなってしまいます。そこでカエルを個体識別し、年齢が違う個体も同居させることで水槽の数を減らすことにしました。

 識別法として最初に思い浮かんだのは1匹ずつ異なる背中の模様です。あらかじめ背中を撮影しておき、その写真を手に識別するのですが、照合するのに時間がかかります。そこでカエルの体内にマイクロチップを入れ、背中の模様と合わせて利用することにしました。

 マイクロチップには番号が記録されており、読み取り機器をかざすと番号が表示されます。マイクロチップは抜け落ちてしまうことがありますが、そんなときは背中の写真と照合して識別することができます。


読み取り機器をかざすと、埋め込まれたマイクロチップの番号が表示される

 飼育スペースを確保するための取り組みでしたが、観察の際に背中の模様を意識するようになり、目で見て個体がわかるようになってきました。それとともに、各個体の性格がはっきりと感じられるようになってきました。たとえば、えさに対して積極的な個体、いつも追い払われてしまう個体、極端に憶病な個体など、カエルの性格もさまざまです(下の写真は見る人の視線が気にならないのか、いつも目立つところにいる個体です)。今後、個体ごとの性格をふまえた同居個体の組み合わせや、展示する個体の選別などにつなげようと考えています。


展示個体、名は「バンデラス」。来園者の視線が気にならないのか、他のカエルよりも
目立つ場所によくいます。なお、展示個体は都合により変更する場合があります

 一見どの個体も同じように見えるヤマアカガエルですが、それぞれ個性をもっています。そうした視点もカエルへの関心につながるきっかけとなるでしょう。動物園へお越しの際は、ぜひじっくりとカエルを観察してみてください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古橋保志〕

(2020年01月24日)



ページトップへ